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「アスリートが生理を後ろめたく思うのはおかしな話」 女子長距離界の第一人者が語る“女子選手に一発屋が多い理由”とは?

新谷仁美選手インタビュー#2

2021/04/02

 2014年の引退から4年のブランクを経て、競技に復帰。2020年には10000mとハーフマラソンで日本記録を打ち出した新谷仁美。

 彼女は現在、SNSや講演会などで、女性アスリートと生理の問題を発信し続けている。

 なぜ引退前の経験をこのタイミングで発信しようと思ったのか。それは4年間のブランクで得た経験が大きかったという。(全2回の2回目。#1から読む)

 

◆ ◆ ◆

「親が正しいと言うことは、子供は正しいと思ってしまう」

「引退前から生理の大切さは分かっていたつもりでした。だけど引退して、一般企業で働くようになり、スポーツ選手以外の多くの女性を見て、私が思っていたよりもずっとスポーツ界の生理の捉え方は一般とはかけ離れていると気づいたんです。

 それに選手としてSNSを使うのであれば、調べれば分かる競技のことだけを発信するのってナンセンスだと感じていました。『今日はこういう結果でした。次も頑張ります』なんて誰でも言えることよりも、メディアではなかなか伝えてもらえない競技人生の過程を発信した方が、選手の魅力が伝わるのではないか。そのひとつが私にとっては生理でした。そして生理が必要ないと思う女子選手はまだまだいて、その価値観を変えていかなきゃいけないのではないかと思ったんです」

 生理が止まるほどの減量を求めるような指導者は徐々に減りつつあり、昔よりも選手を取り巻く環境はよくなったという話を聞くこともある。

 

 ただ、ホルモンバランスや女性のヘルスケアが注目され、ウエブやメディアなどで多くの知識を得ている一般の女性たちに比べると、その動きは鈍い。

 例えば先日こんな話を聞いた。次世代のアスリートへの栄養指導のイベントで講師のもとに、母親が長距離競技に打ち込んでいる娘を連れてきて「この子、太っていますよね?」と聞いてきたというのだ。

「百歩譲って、指導者は他人なので選手に表層的なことしか言わなくても諦めがつく。他人に言われることに違和感を感じる選手もいるでしょう。だけど、世の中がどれだけ間違いだと言っても、自分の親が言うことは、子供はどんなことでも正しいと思ってしまうもの。親も我が子には結果を出して、明るい未来を歩んでほしいと良かれと思ってやっているんです。親子関係は私たちが手を出せない絆があるからこそ難しい問題だと思っています」