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――ナレーター選びに難航していたところ、さくらももこさんが山田さんの声を聞いて即決されたそうですね。

山田 「この声、この喋り方が欲しかった!」と言っていただいたそうです。僕の自然体と、さくらさんが求めていたものがうまく出会ったということでしょうね。

 ただ、こちらはそんなことを露知らず、ずっと後から知りました。最初からさくらさんの思いを知っていたら、期待に応えようとして声を作ってしまって、また違う感じになっていたかもしれませんね。聞かなくて良かった(笑)。

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 さくらさんは「アナウンサーのように淡々と」というナレーションを考えていたそうです。多田さん(さくらプロダクションの多田弘子氏)からいただいたメールで、ついこの前知ったんですよ(笑)。知っていたらアナウンサーを意識して、もっと淡々とナレーションしていたと思います。何も知らずにナレーションをして、それが少し淡々とした感じだったのが良かったんでしょうね。これも知らなくてよかった!(笑)

©深野未季/文藝春秋

――今までお仕事されてきたナレーションと『ちびまる子ちゃん』のナレーションはどのような違いがありましたか?

山田 『ちびまる子ちゃん』は絶対に力んじゃダメだし、自分が目立とうとしてもダメ。あくまでドラマの中に馴染んでいくことが大切でした。ちょっとだけ上から見ているんです。「天の声」と言われていましたけど、天の上じゃなくて天井ぐらいから見ている感じ(笑)。

さくらももこさんは「まる子そのまんま」

――『ちびまる子ちゃん』はさくらさんの台本どおりに読むことが求められていたそうですが。

山田 最初から「一字一句変えないでほしい」と言われていました。一字間違えたら録り直しです。アドリブなんていくらでもできる役者が揃っていましたが、自然にアドリブは出なくなりましたね。僕も素直に台本どおりやっていました。

 でも、さくらさんの台本が面白いの。すごいね。笑いも涙も散りばめられていました。楽しかったね。

――では、収録自体も楽しい思い出が多かったのでしょうか?

山田 そうなんだけど、さくらさんが亡くなってしまったことがとにかく残念すぎて……。他の楽しかったことなんて比較にならないぐらいですよ。