通電で強要した由紀夫さん“横領行為”の念書
〈平成6年12月18日、松永は、由紀夫に命令して、当時の由紀夫の勤務先であった××(不動産会社名)において、由紀夫が会社に納めるべき消毒代金を着服していたことを認める内容の書面を書かせた。さらに、松永は、甲女(清美さん)に対しても、その書面の末尾に、「これはお父さんが書いていたもので私がしょうめいになります。」と書くよう命じた。
実際には、松永は、この書面を作成するまで、由紀夫に通電暴行を加え続け、「悪いことをしたことを言え。」などと問い詰めており、その挙げ句に由紀夫が書かされたのがこの書面だった。甲女もその様子は見ていたから、この書面は、とても「お父さんがふつうに書いていた」ものではなかった。また、甲女は、由紀夫が本当におカネを着服したのかどうかなど知る由もなかったから、内容の「しょうめい」もできなかったが、甲女は、松永が恐ろしく、その命令に従った〉
この「事実関係証明書」の原文そのままではないが、同書面の内容の概要については、判決文に添付された一覧表(以下、一覧表)において触れられている。
〈由紀夫が勤務先(××=不動産会社名)における横領行為を自認するもの。
由紀夫が、「太田(前出の不動産会社同僚)と組み、××が居室を仲介した顧客に対し、居室の消毒を行わないかと持ちかけ、実際には消毒を行わずに、顧客から消毒代金だけを受け取っていた。このような行為を2、30回繰り返し、合計3、40万円を不正に受け取った。また、××の顧客から受け取った物件仲介料を横領したことが10回くらいあり、合計40万円くらいを不正に取得した。また、××の顧客から受け取った駐車場手数料を横領したことが30回くらいあり、合計24万円くらいを不正に取得した。また、太田の友人から印刷を頼まれ、4万円で請け負い、××の印刷機、インク、紙を使って印刷した。」、「このような行為は、詐欺罪、業務上横領罪、背任罪に当たる。」、「どうか許して欲しい。以上のとおり記載した事実はすべて真実である。後日のためにこの書面を差し入れて証明する。」などと記載している。
末尾には、作成日付(平成6年12月18日)、本籍地、住民票上の住所地、現住所が記載され、署名・押印がある。
また、甲女が、「これはお父さんがふつうに書いていたもので私がしょうめいになります」と記載して、署名・押印している〉
続いて残っていた書面は、95年の元旦に作成されたもの。論告書は次のように作成状況を説明する。