起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。
もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。文春オンラインの「完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件」では、発生当時から取材してきたノンフィクションライター・小野一光氏が新証言、新資料も含めて、大きな“謎”を描いている。
そこで、「文春オンラインTV」(3月2日放送)では、小野氏にインタビューを敢行。記事に書ききれなかった事件の秘話を語ってもらった。
福岡県北九州市の松永太(40)による史上稀に見る凶悪犯罪。内縁の妻、緒方純子(40)と共に被害者を監禁したうえマインドコントロール下に置き、自らは手を下さずに殺し合いをさせていた。2002年、監禁されていた広田清美さん(仮名・17)の脱走により発覚。清美さんの父、由紀夫さん(仮名・34)、純子の両親である孝さん(仮名・61)と和美さん(仮名・58)、妹の智恵子さん(仮名・33)とその夫の隆也さん(仮名・38)、二人の子供の花奈ちゃん(仮名・10)と佑介くん(仮名・5)の計7人が殺害されていた。
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—— 小野さんは今までこういった殺人事件をいくつも取材されているんですよね。
小野 そうですね。20年以上、殺人事件の取材をやっていまして、その中でも複数の人が亡くなっている事件は、これまでたくさん取材してきました。この北九州監禁連続殺人事件以外でも、福岡一家4人殺害事件だとか、大牟田4人殺害事件、それから秋田の児童連続殺害事件、尼崎の連続変死事件などを取材しました。
—— その中でも、この北九州監禁連続殺人事件というのは特に印象に残っていると。
小野 この事件が発生した当初、偶然私が福岡に居たので、最初から取材しているんです。今でこそこんなに大きい事件になりましたけど、最初はあくまでも少女が監禁されて傷害を受けたという事件でしかなかったんです。だけど、取材していくうちに死者がいるという話になり、どんどん死者の数が増えていくという、徐々に広がりを持った事件だったので、そういう点では非常に興味を持って取材しました。
第一印象は色白の男前「女性たちはこういう笑顔に引っかかったんだな」と
—— 小野さんは2008年11月に主犯の松永死刑囚と面会をされたそうですが、初めて会った時はどんな会話をされたんですか?
小野 会った時にまず驚いたのは、面会室に入ってきた時の松永があまりに明るいこと。手に分厚い裁判の資料を抱えて入ってきて、笑顔で「小野先生、よろしくお願いします」と言って。それからは彼の独壇場というか、自分が主張したいことをずっと言ってくる。「この裁判は魔女狩りのようなかたちで自分を悪者にしようとしている。自分は無実である」という話をして、自分の無罪の主張を繰り返していった。私はその事件の内容のひどさを知っているものですから、その犯人がここまで明るいと思わなかったんですけれども、時には笑顔も交えて、冗談も入れながら話していたことに驚かされました。