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「自分が取り込まれてしまう恐怖を感じた」

—— 「文春オンラインTV」の視聴者から、「犯人と面会した時、記者はどんなこと聞くの?」という質問がきています。

小野 質問をいきなりすると、相手がまた次会ってくれなくなる可能性があるんです。なので、いきなり質問というのは通常はしません。雑談からです。それで、向こう側が訴えたいことを聞く。こちら側が聞きたいことを聞くんじゃなくて、向こうが話したいこととか、そういうことを話題の中心にして、そのうえでこれからどうしていきたいかと。そうやって関係性がだんだんできてくると、こちらのほうから聞きたいことを聞いていきますが、初期段階では聞くことはないですね。

—— 他にも、「数々の殺人事件を取材されている小野さんですが、松永ら犯人に共通するもの、または、松永だけにしかない性質は?」という質問がきています。

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小野 共通するものは意外と少ないんです。連続殺人犯に共通する点といえば、徹底的に相手の命を奪っても何とも考えてない部分というか、そうまでして自分の利を確定したいのかなど、そういう部分では共通はしているんですけど、それ以外は本当に人それぞれバラバラですね。

小野氏宛の封筒に記された名前 ©小野一光

—— 松永死刑囚はいかがですか?

小野 やはり非常に自分自身を過信しているというか、非常に狡猾な人物ではあるんです。例えば私と接している時も、最初は「小野先生」から始めて、それが途中で「小野さん」に変わり、最後は「一光さん」に変わって、どんどん親しみを演出してくるんです。一番驚くのは、たぶん自分自身のやったことに対する自覚のなさというか。あれほどのことをやったにもかかわらず、自分は一切かかわっていないと本当に思い込んでいるかのような態度を見せる。なかなかそういう犯人に出会うことは少ないので。自分のやったことに対して自覚している犯人が多いなか、彼は自分は本当にやってないと思い込んでいるんじゃないかと思うぐらい、他人事のような話し方をしていました。

—— そこまで堂々としていると、逆に信じてしまうことはなかったですか?

小野 そこに関してえば、やっぱり恐怖というのは感じます。下手をすると取り込まれるなとか、そういうふうに思ってしまう恐怖というのはあるんですけど。でも、こちらも職業として殺人犯と対峙しているわけですから、そこら辺での距離の置き方というのをできるだけ意識してやるようにはしていました。持っていかれないようにするということが一番だと思いますね。

—— この事件に限らず、他の事件でもそういうところを意識されていると。

小野 そうですね。客観性をできるだけ失わないようにしなければ、と思うので。殺人犯でも、人間的な部分が見えてきたりして、「ああ、こいつこういうところが魅力的な部分でもあるな」と思うような人が居たりするんです。なので、彼らがやった犯行自体は、必ず頭の片隅に置いて意識しています。でないと、徐々に自分自身も取り込まれて、彼らの主張をそのまま疑わずに信じてしまうようになってしまうので。