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「もっと言ってもらっていいですか?」ベッキーのリクエストに応え続けた名声優・キートン山田さんの思い出

2021/03/28
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「後半へつづく」のナレーションも耳に鮮やかな声優・ナレーターのキートン山田さんが3月28日放送の『ちびまる子ちゃん』(’90年~)をもって約31年(!)続けたナレーションを卒業、声優を引退することを発表した。近年ではテレビ朝日系の人気番組『ポツンと一軒家』(’18年~)のナレーションも担当。お茶の間の癒しになくてはならない存在のひとりだった。

キートン山田さん ©️共同通信社

 キートンさんは1945年10月25日、北海道生まれ。高校卒業後、上京し、建設関連の会社に就職。劇団がらくた工房に入団し、役者と会社員の二足のわらじ生活を経て、声優事務所の草分けである青二プロダクションに入った。そのお誘いは、先輩俳優で、『タイガーマスク』(’69年)のミスターX役や『グレートマジンガー』(’74年)の兜剣造博士役などで知られる重鎮・柴田秀勝さんだったという。

スランプを経て、『ちびまる子ちゃん』のナレーターに

 昭和42年生まれの筆者が具体的にキートンさんこと山田俊司さんを意識したのは『ゲッターロボ(& G)』(’74年)の主人公のひとりでナンバー2。クールでドライな二枚目キャラ、神隼人の声優としてだった。この“影のある二枚目”という役は、ほどなく“主人公のライバルで、悪側にいる美形”というキャラに進化。キートンさんが、まだ山田俊司名義で演じられた『惑星ロボ ダンガードA(エース)』(’77年)の美形敵キャラ、トニー・ハーケンは、同時期に『超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)』(’77年)で市川治さんが演じたプリンス・ハイネルと双璧を為す人気を獲得。実写特撮作品の着ぐるみキャラでも『がんばれ!! ロボコン』(’74年)の大工ロボット・ロボトンや、『アクマイザー3』(’75年)の敵・アクマ族の隊長・鉄面鬼や隊長ハリスフィンクスなどの声を演じてどんどん活躍の場を拡げていった。

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 だが、そんな人気者のキートンさんにもスランプというか、ブランク期間があったというから驚きだ。『宇宙戦艦ヤマト』(’74年~)や『機動戦士ガンダム』(’79年~)の大ヒット(大ヒット自体はアニメ放送から数年後だったが)で火がついた一大アニメブームの影響で声優の数がグッと増え、以前より仕事が減ってしまったという。そんなキートンさんの2度目のブレイク=転機となったのが、今や日本国民なら知らぬ者のないアニメ『ちびまる子ちゃん』のナレーターだった。38歳で今のキートン山田に改名、それから6年後の44歳の時のこと。以降、キートンさんは、自身のお仕事はナレーション1本に絞り、個人事務所も設立。後進の育成にも力を注いだ。