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とっちゃんへのバースデープレゼント

 今年もとっちゃんの誕生日、3月28日がめぐってきた。神戸はあいにくの雨だ。雨は何だか気持ちがさえない。でも大丈夫。3年前とは違う。桜はちゃんとピンクに見える。私の世界には色が戻った。

 それにけさ、表のチューリップが咲いているのに気づいた。とっちゃんが大好きで毎年植えていた。育てていたバラも芽吹いている。とっちゃんへのバースデープレゼントに違いない。

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バラの花を手入れしている俊夫さん。2017年5月、改ざん後ですでに表情が暗くなっていたという(赤木雅子さん提供)

 雨だからバースデーケーキを買いに行くのはやめてしまった。でも岡山の実家から母親がケーキの写真を送ってきた。「とっちゃんのケーキだよ」というメッセージを添えて。

 それに最大のプレゼントがある。ドキュメンタリー映像作家の久保田徹くんが作ってくれた私の動画。東北の被災地での話を中心に10分余り。Yahoo!クリエイターズプログラムのドキュメンタリー部門にアップされている。

「夫のために、真実を知りたい。私にできることは裁判」―「森友学園問題」で夫を亡くした赤木雅子さんの今
https://creators.yahoo.co.jp/kubotatoru/0200097723

 この動画の最後で私はこう話している。

「大丈夫。私にできることは裁判」

「私は強いので、とっちゃんのためにこうやって闘うことができる。夫のことを証明してあげるためにも」

誕生日の3月28日、満開になったチューリップ(赤木雅子さん提供)

忘れられないように声をあげていく

 改ざんについて告発するとっちゃんの手記を週刊文春で全文公開し、国と佐川さんを訴えてから1年。私は強くなった。

 それまでの2年間は財務省の人たちから重しをのせられているようで、好きなように行動することも意見を言うこともできなかった。でも手記を公開して隠す必要がなくなったから怖いものがなくなった。財務省の人たちは相変わらず、とっちゃんの残した改ざんの記録「赤木ファイル」をあるともないとも言わない。早く本当のことを言ってしまえばいいのに。それが楽になる道だと、私は気づいた。

 閖上の丹野さんが語った「一番つらいのは忘れられてしまうこと」という言葉は本当によくわかる。私も大切な人を亡くした者として、忘れられないように声をあげていく。

 私は一人じゃないとふと思う瞬間は、本当は一人なんだと思い知らされる瞬間でもある。でも、もう後戻りはしないんだ。とっちゃんはきっと「おもろいことやってるなあ」と笑って見守ってくれているよね。