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「最近は警察がウルサい。だから私がホテルまで案内する」

 娼婦たちは常に店にいるのではなく、客が来たらママが電話をして呼ぶシステムになっているのだった。

「最近は警察がウルサいからね。ここで会って、ホテルへ行ってもいいけど、私がお客さんをホテルの入り口まで案内して、そこで女の子と引き合わせるようにしているんだよ。ここ2、3年はびっくりするほど警察が取り締まりをしているからね。隣の店もやられたしね」

 口が臭いだ、警察が厳しいだのと言われると、元からあまり買う気はなかったが、ますます買う気が失せてくる。

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 何本も飲めるものではないが、缶コーヒーを追加で注文する。

「捕まったことあるもん」

 警察の取り締まりで大変ですねと話を振ると、彼女は事もなげに言った。

「1回目は5万円の罰金、2回目は今から4年前で6ヶ月の営業停止。その時さ、刑事に取り調べを受けて、貯金や年金があるって言ったら、何て言ったと思う、金貸してくれだって。男前の刑事だから、遊んで金がないんでしょうね。捕まっているのにふざけんじゃないわよって言ってやったわ」

©八木澤高明

「男っていうのはどういう生き物なのかなって思うのよ」

 今現在、取り締まりを生き残って営業しているのは3軒だけだという。

「まわりもみんな暇だよ。だって毎月おまわりが来て張り込みをしてるんだもん。車も決まっててシルバーのセダンで来るのよ。去年は、10月17日、11月25日、12月1日にこの界隈の経営者が捕まっているね」

 何で正確に日にちまで覚えているのかと思ったら、カウンターの向こうに掛けてあるカレンダーに摘発があった日に丸がついているのだった。

「何も書くことないから、記録してんのよ。お客より警察のが多いね」

 さすがに冗談だろうが、自虐的なことを言うのだった。

「こんな状況だけどさ、家にいても何もやることないから、この仕事をやってんだよね。私がこの店をやりはじめたのは7年前のことだよ。前にやっていたママと銭湯で毎日顔を合わしていたら、ある日言われたんだよ。やってみないかって。それまで事務の仕事をしていて、定年になってやることもなかったから、暇だからいいかなと思ってやりはじめたんだよ。この仕事をやってみると、男っていうのは何でそこまでセックスが必要なのかって思うね。ちょっと教えてくんない?」

©八木澤高明

 この店に入って、次から次へとやってくる男たちを見ていて、驚くことが多いのだと言う。

「中にはさ、先週結婚したばかりだっていうのに来るのもいるのよ。家でやってればいいじゃないのさ。そういう姿を見てるとさ、男っていうのはどういう生き物なのかなって思うのよ」