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「昔は、路上で貝を焼きながら女の子と遊べる店があった」
「昔はね、路上で七輪出して、貝を焼いて売りながら、女の子と遊べるような店がけっこうあったんだってね」
まさに戦後の闇市、屋台で飯を食わせながら、女を置いていたのと同じ様である。横浜・黄金町は、おでん屋が女を置いていたと聞いている。ここでは海産物の貝だったのだ。
「ここが貝を焼いていたかはわからないけど、旅館だったみたいね。上が部屋だったのよ。昔、何回も人殺しがあったみたいで、夜中によくコトコト音がして気持ち悪かったから、神棚を置いたら止まったのよ。今じゃ人も来ないから、お化けも出てこなくなったのかもしれないけどね」
「こういう商売はもうダメだね」
今もかろうじて続く、売春はいつまで続くのだろうか。
「更地になった土地は、市の土地になっていて、こっちはちょっと土地関係が複雑みたいだから、もう少しやれるんじゃないかね。だけど長くはないでしょう。ヤクザが生活保護もらっているような時代だから、こういう商売はもうダメだね。あと3年やれたらいいんじゃないの」
ちょうど、新幹線が通る頃には、ここもなくなるのではないかと言うのだ。行政からしてみれば、駅からほど近い寂れた売春街は目ざわり以外の何ものでもない。
「時間があったらさ、手紙でも書いてちょうだいよ」
老婆は店の住所を書いて渡した。