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「小泉首相も知っているはず」拉致問題のかたわらで進行していた闇深い“北朝鮮開発プロジェクト”の実態

『泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴』より #20

2021/04/12

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会, 政治, 経済, 読書

note

密かに進行していたプロジェクト

 だがその実、日本企業による北朝鮮の開発プロジェクトだけが、密かに進行していたのである。しかもそれは、小坂のような得体の知れない人物の計画ではない。

 くだんの「錦織レポート」の冒頭ページには、次のように書かれていた。

〈ここに至るまでの経緯としては、2000年11月と2002年11月に私(錦織達郎)が訪朝し、金進哲先生(アジア、アフリカ団結協力委員会委員長)をはじめ、関係者と共和国のインフラ整備について話し合った。

 また、2001年3月に共和国の技術者4名を我が国に招聘し、大阪、神戸、東京を案内した。

 こうした状況の中で、共和国からの要請もあり日本国内の窓口会社として、株式会社レインボー(その後明星に商号変更)を設立し、その役割を果たして来たが、中心になって業務を遂行していた代表取締役が体調不良となり休眠状態に陥った。その善後策について共和国と相談の結果、2002年9月新たに錦織技術研究所を設立し、インフラ整備の業務を引き継ぐことになったものである〉(原文のまま引用・以下同)

知られざる金正日将軍の直轄部隊

 ちなみにここに登場する〈明星〉は、小坂やレインボーブリッヂとは関係ない。日本国内に設立されていた北朝鮮シンパのコンサルタント会社だ。また、在日団体の朝鮮総連傘下の企業でもない。朝鮮総連の幹部が内実を明かす。

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「本国は、日本の窓口としてわれわれ在日朝鮮人組織である総連を使うように見られていますが、それとは別に動く金正日将軍の直轄部隊や企業があります。その一つがこの明星です。明星は金正日将軍様ご自身のことを指す言葉です。在日企業でありながら、将軍様を示す商号が使える。その意味については、想像がつくでしょう」

 錦織はこの〈明星〉の業務を引き継ぐほど、北朝鮮政府と深い関係を築いていた。関電が進めてきた北朝鮮プロジェクトは、それと同時に北朝鮮の専制君主による指令で進められていた計画だった。