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今村 短篇はゴールが見えているのが大きい。長編の場合、編集者から「600枚くらい」と発注を受けることが多いんやけど、最近は600枚で終わらなくなってしまう。ちなみに、みんな長編を書くとき編集者からどれくらいの枚数の長さまでならOKって言われるの?

木下 500枚から600枚かな。

谷津 同じく。直接は言われないけど、600枚くらいで終わらせてねって雰囲気は感じられる。

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天野 僕は1000枚くらいかな。

今村 そんな多いん!?

澤田 デビュー作の孤鷹の天』(徳間文庫)は元々、1400枚くらいあったんです。でも、編集者に「削ってください」と言われたから、結果1200枚くらい、ソフトカバー2段組で出版したんですね。そうしたら広告かなにかで、「1000枚の大作!」と、本当の枚数より減らした数字を打ち出されました(笑)。

今村 分厚い本になると、どうしても一冊当たりの定価が上がっちゃうからね。「これ以上書くとなると上下巻になってまうな」とかやっぱり考えてしまいます。僕の場合、松永久秀を描いたじんかん』(講談社)があまりにも分厚かったからか、SNS上で「筋トレ用ですか?」「もはや凶器」とかいじられました(笑)。

天野 タイトル変えて上下巻にすればいいんじゃない?

谷津 『じん』と『かん』で出すとか(笑)。

今村 いやいや(笑)。上下巻って、大御所しか許されないイメージがあるんですよ。読者としても下巻までなかなかついてきてくれへん気がする。だから、なんとか1冊でおさめられる枚数で書こうと考えてしまいます。

北方謙三さんに読んでもらえるって

武川 私は木下さんと同じく短篇の賞でデビューしたので、長編は体力的にも大変だと少し尻込みしちゃいます。この座談会は作家志望の人も読まれると思うんですけど、そういう方にはまず短篇を書いてみることをおススメしたいです。まずは短い話でも完結させるというのは当たり前だけど、大事なことで。

武川佑 たけかわゆう
1981年神奈川県生まれ。2016年「鬼惑い」で「決戦!小説大賞」奨励賞を受賞。2017年『虎の牙』でデビュー。著書に『千里をゆけ くじ引き将軍と隻腕女』など。

天野 逆に僕なんかは、デビュー作でも400枚くらいあったように、すぐに長くなってしまう。そういう人は書きたいことを全部書かないように、頭の中で削って書いたほうがいいでしょうね。

今村 天野さんはなんで、小説すばる新人賞に投稿したん? 歴史小説であの賞を受賞するのは大変でしょ。僕も小説すばる新人賞に応募しましたけど落ちました。

天野 僕は小説すばる新人賞か、ポプラ社の賞で迷ったんです。両方とも賞金が高いから(笑)。

今村 なんやそれ(笑)。でも、小説すばる新人賞を受賞すると、作家として生き残ることができる確率が高いって都市伝説は流れてるよね。

天野 いや、そういうことも調べず応募しました。賞金と、選考委員の北方謙三さんに読んでもらえるって点が大きくて。