由紀夫と甲女に与えられる食べ物は、いつも、マルタイの棒ラーメン、丼やボウルに盛った白米やうどんなどだった。ラーメンには具は入れられておらず、たまに松永の機嫌次第で卵が入る程度で、あとはラードがかけられていた。白米にも、いりこが炊き込まれたことが2~3回あっただけで、やはりラードがかけられていることが多かった。それ以外には、由紀夫と甲女に対し、肉類、野菜類、魚類などのおかずが与えられたことは一度もなく、時折、食事の他に、コーラやポテトチップスやカロリーメイトが与えられた。水も自由に飲むことはできず、松永の指示があるときにしか飲めなかった。逆に、どんぶりに5杯という大量の水を無理矢理飲まされたこともあった。
与えられる食事の量は、由紀夫と甲女でほぼ同じだった。例えば、白米であれば3合半くらい、水であればどんぶりに5杯という量だった。一度の量として見れば量があるが、食事は一度きりであったので、いつもお腹を空かせていた。そのため、甲女は、学校では給食を残さず食べるようにし、欠席者の分も競争して食べた。それでも、甲女は、前記のとおり発育が遅れ、しばしば貧血も起こしていた〉
ここで触れられた食事の時刻については、同公判での判決文(以下、判決文)において、以下の状況が認定されている。
〈由紀夫は深夜1時ころから3時ころ食事を与えられることが多かった。松永が食事内容を決め、その指示に従って緒方が食事を用意して盛りつけるなどして由紀夫に与えた(甲女についてもほぼ同じ)〉
過酷な食事制限により少女は発育不良に
また、同じく判決文には絶食について次のようにある。
〈松永は、制裁等の理由により、由紀夫と甲女に食事はもちろん、水さえも与えない日があった。松永は、ときには、由紀夫に対し、1週間くらい食べ物を与えず水だけしか与えなかったり、3日間くらい食べ物も水も与えず完全に絶食させたりした〉
論告書は、由紀夫さんと清美さんの食事制限について続ける。
〈(ウ)食事の時間制限
食事には時間制限があった。時間内に食べ終えないと、松永は、通電等の制裁を加えた。由紀夫が制裁を受けたことは、約50回あった。
松永は、食事中の由紀夫の顎や両耳に通電用のクリップをあらかじめ取り付けておき、制限時間が経過した瞬間に通電したこともあった。そのせいで由紀夫が食べ物を吐いたこともあったが、松永は、由紀夫にそれを再び食べさせ、かつ、吐いたことを理由に更に通電を加えていた。