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森伊蔵の桐箱に1億1000万円

 水谷功はその「吉兆会談」のとき、鹿児島の人気高級焼酎「森伊蔵」2本を石原慎太郎への手土産として用意した。桐の箱に入った立派な焼酎だ。その箱から焼酎を抜いて1億1000万円ずつ札束を詰めた、とクローズアップされたことがある。それに対し、石原事務所では、一貫して「焼酎は受け取ったが金銭の授受はない」と否定してきた。が、現実に、不要になったその森伊蔵のうち1本を飲んだという水谷建設の下請け業者も存在する。

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 もっとも、水谷本人は宴席で羽田空港の一件を持ちだすわけでもなく、水谷建設は工事を受注できず仕舞いだった。そのため結局、ことの真相はうやむやになっている。北朝鮮の砂利取引に携わっていたブレーンが指摘する。

「北の砂利は、5度ほど韓国に運びました。その段階で、横やりが入った。今は李明博が大統領になったから(編集部注:取材当時)おかしくなったけど、あのころは金大中から盧武鉉へと大統領が変わったあたりの流れなので、南北は非常に仲がよかった。それで北朝鮮の沿岸の砂利は警備名目上、北の軍が浚渫し、韓国軍の了解の下で輸出できていました。つまり砂利事業は南北双方の軍の利権になっていたのです」

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 ところが、水谷建設はほどなくして北朝鮮の砂利事業から撤退する。先のブレーンの説明によればこうだ。

「本来、南北双方の軍に利益を落とせば、砂利事業はスムーズに運んだはずですが、当時われわれはそこまで気が回りませんでした。それで、まごついているうち、日本国内で東京地検による脱税事件の捜査が始まってしまいました。で、北朝鮮どころではなくなってしまったのです」

 北朝鮮ルートづくりに奔走していた時期は、水谷功の絶頂期だったに違いない。いつしか平成の政商という異名をとるようになり、地元三重県の料亭で還暦パーティを開いた。そこでは差出人「衆議院議員安倍晋三」と書かれた大きな蘭の花をはじめ、政界や芸能界の有名人たちが宴を彩った。

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