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 バーチャルアシスタントとしてのコルタナがリリースされたのは2014年4月なので、彼女は現役8年目である。対するカイル君のデビューは1997年であり、2007年に引退している。だから二人が“同僚”だった時期はないはずなのだ。

 大先輩を指して「カイル君」と呼んでいるところからすると、二人は親子ではないのだろうが、歳の離れた兄妹だという可能性はある。だからなんだという話だが。

アメリカにもいた“嫌われ者”

 国内では知名度の高いカイル君だが、彼が標準搭載されていたのは日本語版のOfficeだけである。かわりに英語版では、「Clippit」というペーパークリップのキャラクターが案内係を務めた(名前は「Clippy」「クリッパー」とも)。

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英語圏のユーザーに嫌われまくったClippit君だが、有名なキャラクターとしてよく引き合いに出される。Twitterでは現在でも「Clippit」「Clippy」に関する投稿が多い。

 こいつがまた、絶妙な具合で挑発的な表情をしているのである。

 Officeアシスタントの現役期間に販売されたパソコンには、フリーズ多発で知られる「Windows Me」搭載機もあった。うんともすんとも言わなくなった画面上で、Clippit君が「調子はどう?」と問いかけたまま居座っていようものなら、それはもう、はらわたが煮えくり返る思いだろう。頑丈なCRT(ブラウン管)ディスプレイ越しにClippit君を殴ろうとして手を怪我したアメリカ人がきっといるはずだ。

 そういうわけで英語圏のClippit君は、日本におけるカイル君と同じか、それ以上の嫌われ者だった。同時期には「なぜ人はペーパークリップを嫌うのか」(Luke Swartz, 2003)という論文さえ世に出ている。論題における「ペーパークリップ」とは、もちろんClippit君のことだ。日米ともに、Officeアシスタントは記憶に残る存在だったようである。

 この論文は「(パソコン画面上での)擬人化は必ずしも有効ではない」と結論を出している。たしかに当時のOfficeアシスタントは未熟だったが、しかし現代にはアレクサやコルタナなど、実用水準のバーチャルアシスタントが多数存在し、人間らしい発話で我々の問いに答えてくれている。

 AIの進歩や擬人化の流行は今後も続くだろうから、Officeの疑問にすべて答えてくれるような立派なバーチャルアシスタントが近々生まれても不思議ではない。称えられずに役目を終えたカイル君たちは、その偉大な先達だったのかもしれない。

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参考:「パパセンセイ」氏の動画「ExcelでVBAを使わないでドラクエ3を再現してみた」(https://www.youtube.com/watch?v=xWgHHwZn6Mk)