外出自粛が国策とされた2020年は、まさしく“テレワーク元年”であった。都市部の大企業を中心に在宅勤務が普及し、書斎や茶の間が「ホームオフィス」に姿を変えた。新型コロナウイルスにまつわるニュースはどれもつらいが、通勤地獄からの解放に限っては、喜んでいる人が相当数いてもおかしくない。
しかしテレワークには泣き所もある。WordやExcelの操作が思うように行かないときに、一昔前なら「パソコンに詳しい△△課の◯◯さん」に見てもらえばよかったところ、テレワーク環境ではそうもいかないのだ。そもそも在宅勤務自体にパソコンが必須であり、デジタルに弱い人は苦労が多いこととしのばれる。
もしもパソコン自体がパソコンの操作を教えてくれたら助かるのだが、それもなかなかうまくはいかないようだ。かかる試みの“失敗例”として思い浮かぶのは、青くてかわいいイルカの姿である。
スマホ世代も知っている「カイル君」
かつてMicrosoft Officeの画面上には、「カイル君」というイルカがいた。
作り始めた書類といえば真っ白なのが相場だが、カイル君の身体は青いから、画面上でひときわ目を引いた。いつも大きなフキダシを背負っていて、「何について調べますか?」と健気にサポートを試みる。
しかしこちらの質問に的確な答えを返してくれることは稀で、ほとんど役に立たない“ダメイルカ”だった。ある頃にはカイル君に「お前を消す方法」を尋ねる画像が拡散し、ネットミーム(流行現象)にもなった。やはりというか、ほとんどのユーザーから「邪魔だ」と思われていたのだろう。
そんなカイル君の略歴をたどると、1997年の「Office 97」でデビュー。続く「Office 2000」でも可憐な姿をアピールしたが、その後の「Office XP」では初期設定でオフにされ、最終的には「Office 2007」で廃止されてしまった。だから最新の「Office 2019」では、書類を背景に泳ぎ回るカイル君の姿を拝むことはできない。
そうなると、スマホで育った若者たちは“Officeのイルカ”を知らないはずである。そこで今回は、ジェネレーションギャップの実感を求めて、就活中の学生や就職したてのフレッシュ世代に「Officeのイルカって知ってる?」と尋ねて回った(いい迷惑である)。
ところが答えは意外なもので、20代でも5人中4人がカイル君のことを認知していた。「お前を消す方法」の画像がやはり有名で、彼らもこれを知っていたようである。
さすがはネット世界にさといスマホ世代だ。