MTVジャパン代表取締役CEO、マイクロソフト執行役常務を経て、2014年からツイッタージャパンの代表取締役を務める笹本裕氏。
今回は、アメリカに本社を持つ音楽専門チャンネル「MTVジャパン」時代の苦労を振り返った。本社と現場の“板挟み”にもなり得る外資系企業。現地のトップとして、笹本氏はどうやって乗り越えてきたのだろうか。
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ライブイベントでの大失敗
MTVジャパン時代、いま思い出しても恐ろしくなるような失敗をしました。
それは、有楽町の東京国際フォーラムでおこなったライブイベントでのこと。
ライブの準備段階で、アメリカ本社の人たちが「MTV的なものをやりたい。ついては、ステージのセットは日本の美術さんに頼らず、全部アメリカから手配したい」と言いだしたのです。
「まあ、こだわりがあるならしょうがないか」と思いつつ当日を迎えたところ、本番直前になってセットが会場のエレベーターに乗らないことが発覚。こちらの舞台のサイズを測らずにアメリカから持ちこんでいたんです。
仕方がないので、セットをその場でギーコギーコとノコギリで切ってエレベーターに乗せ、舞台上でまたくっつけるという「工事」を、舞台を転換するたびにやっていきました。当然、アーティストが替わるたびに20、30分くらい間が空く。異例の事態です。
本来、そのライブは3時間で終わる予定でしたが、結局8時間以上かかってしまった。終電もなくなっていくので、お客さんも帰っていきます。ライブ映像を収録しないといけないのに、会場が時間を追うごとにガラガラになっていく。
お笑い芸人のロンドンブーツ1号2号さんがMCをやっていたのですが、お二人が「みなさん、最後まで残っててくださいよ!」「終電後のタクシーはMTVさんが持ってくれますから!」などと言って、引き止めてくれていました。
当然ながらスポンサーさんは「もう二度とスポンサーなんかやるか」とものすごく怒っていました。「これはお詫びに行かないと……」と、あのときはぼくも胃が痛かったですね(苦笑)。