2億6000万円相当の金が出たことも
《黄金の悪魔》を筆頭に、金鉱山に集うのは脛に傷もつものばかり。一発逆転の可能性にかけて、ガリンペイロたちは朝から晩まで肉体労働にいそしむ。金は1グラム130レアル(約4000円)で換金され、金鉱山の所有者に7割、ガリンペイロに3割が入る。この鉱山ではかつて65キロの大物(2億6000万円相当)も出たことがある――。採掘現場を描きながら、男たちの物語も明らかにしていく。
「執筆する際、彼らが語ってくれた話をすべて聞き直し、一人ひとりの物語を綴っていきました。30人以上の話で、原稿用紙600枚。書いた後、すべてをばらして時系列に並べ直し、その人のエッセンスを抽出できるよう試行錯誤しました」
執筆に2年の時間をかけたというが、拘ったのは“土地”を描くということだ。
「そこには誰でも行ける。でも、そこが行き止まりなのか、その先があるのかは分からない。いつでも出ていけるはずなのに、なぜか出ていけなくなる。そんな土地にいる彼らは、ただの貧困層ではないんです。ほんのひとひらだけど、希望がある。だから自暴自棄になれず、朝から晩まで働くんです。希望があるからこそ残酷なんですよね。
でも、それは彼らに限った話ではない。僕らだって、希望はあるけど叶うことは少ない。それが残酷に見えないのは、僕たちの社会では、他のことに気をそらすことができるから。隔絶された場所では、そのごまかしがきかないんです」
過去の素行も分からない、金鉱山でしか生きられないように見えるガリンペイロたち。しかし、本書を通してみると、そう評する我々もまた、限られた場所でしか生きていけないことを思い知らされる。
こくぶんひろむ/1965年、宮城県生まれ。NHKディレクター。手がけた番組に「ファベーラの十字架2010夏」「アウラ 未知のイゾラド 最後のひとり」「北の万葉集2020」等。2011年、『ヤノマミ』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『ノモレ』がある。