新型コロナウイルスはこれまでの世界の常識に大きな変化を与え、多くの業界にさまざまな影響を及ぼした。そんななか、パチンコ業界に向けられたのはバッシングの矛先だった。休業するホールが相次ぐ中、営業するホールに出向こうと長距離を移動する客を好奇の目で取り上げるワイドショーを記憶されている方も多いだろう。
そんなパチンコを愛し、業界の未来について、面白く、そして真剣に語るのが大﨑一万発氏、ヒロシ・ヤング氏の二人だ。パチンコ業界に半生を捧げてきた彼らは、今のパチンコ業界にどのような思いを持っているのだろうか。著書『パチンコ崩壊論』(扶桑社)の一部を抜粋し、紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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何をもってイイ客とするか
大崎 一部の情報強者だけが勝って幸せになるという状況は、なんとか避けたいところなんだけど……。
ヤング 理想はそうだけど、まあ厳しいよね。いや、おまえら散々オイシイとこ持ってった後で寝言ぬかすなってご批判は甘んじて承りますけど……。
大崎 そのためにはどうすればいいかという話になったときに「じゃあ、情報を一切出さなければいいじゃん」って考え方もある。パチスロは機械割だけ、パチンコは大当り確率と確変率(*1)だけ出して、あとの情報は全部黙っておくって作戦。
*1 確変突入率のこと
ヤング でもスロットは6号機になって、最終的な数値や特性はほとんどのメーカーが出してないじゃん。でも、ネットで探すと、なぜか完璧な立ち回り術が公開されてたりする。
大崎 うん、そこが今のネット時代を象徴しているというか。ビッグデータ(*2)が上がっているわけだし、以前なら業界人にしか出回らなかったような口コミ的情報もじゃんじゃんリークされる。それを分析力に長けたクレバーな人たちがよってたかって丸裸にして、有益な結果はすぐさま共有されていく。だから、特にパチスロは、もう隠したところで意味がないどころか、ますます情報格差を広げてるだけだと思う。
*2 一般的なソフトウエアで扱うことが困難なほど膨大で複雑なデータの集合を表す言葉。パチンコ・パチスロでは、全国の営業データを指す場合が多い
ヤング そういう情報をnote(*3)とかで売る人も増えたよね。実績のある配信者?っていうのかな、随分と稼いでる人もいるらしいじゃん。
*3 ブログのように情報発信ができるツール。文章での表現に特化しており手軽に有料販売することも可能。現在ではパチスロ雑誌がやっていたことをnoteでいちユーザーが気軽に投稿できる時代になっているようです
大崎 それこそがかつて攻略誌がやってきたことなんだよね。それが今や個人でやれるビジネスになってしまった。逆に雑誌は広告をもらってる以上、メーカーに不利益なことは書かない。で、そうなると当然雑誌なんて不要って話にも……。
ヤング なるよね。個人がネットでやるなら、メーカーやパチンコ屋に対する忖度なんてしなくていいし、メーカーの数値偽装(*4)だって平気で暴いたりする。「6の機械割、発表値と3%も違いますけどぉー!」みたいな。
*4 メーカー発表の機械割と実際にホールで稼働したときの機械割にズレがあるのは昔から。現在ではネット上でのデータ収集も比較的容易なので、一般の人でも検証することは可能でしょう
大崎 で、1台30万も40万も出して買ったパチンコ屋がその情報を見たりすると、話が違うってことになる。パチンコ屋からすれば台は集金装置なわけで、当たり前だけど「聞いてないよ」、は許されない。そんなギリギリのところでそれぞれがつばぜり合いしている状況を「楽しい遊技です、エンタメ業界です、わーい♪」なんて誰が言える?
ヤング みんな余裕ないナー、エラいことになっとるナーって完全野次馬目線で見るのが一番のエンターテイメントなんだよ。
大崎 こうした状況は加速こそすれもう止まらんからね。考えたくもないけど、崩壊に向かって突き進んでいると思う。
ヤング 行き着く先まで行ったその先がどうなってるか……。