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科学的に証明された“脳汁”の正体…大人気パチンコ・海物語は「演出の信頼度が40%っていうのが絶妙」

『パチンコ崩壊論』より #2

 虹保留、激熱演出、フリーズ、リーチ目出現……。パチンコやパチスロをはじめとしたギャンブル全般で、的中を予感したときの恍惚感を「脳汁が出た」と表現することをご存知だろうか。この「脳汁」は、決して抽象的な概念ではなく、すでに脳科学の世界で実在が証明されている。

「脳汁」の存在を証明したのは、自身もパチンコを嗜む脳科学者、篠原菊紀氏だ。ここでは、パチンコに半生を捧げてきた大﨑一万発氏、ヒロシ・ヤング氏の著書『パチンコ崩壊論』(扶桑社)の一部を抜粋。両氏が篠原氏に行った取材の模様を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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「脳汁」がパチンコ研究の発端

ヤング ガラッと話を変えていいですか。先生今いくつですか?

篠原 61歳。

ヤング オレ、先生に初めて会ったの多分20年くらい前なんですよ。

篠原 パチンコの研究始めたのがそのころだからね。

ヤング 先生がパチンコと出合ったのっていつですか?

篠原 よく覚えてないんだよね。大学生のとき普通にやってたんだろうけど、皆さんほどはドハマリしてないと思う。

ヤング 先生、東大でしょ。

篠原 うん。学生時代はそんなにやってなくて、パチンコの話をちゃんとやったのはいつだろ……。必勝ガイドが脳汁(*1)とか言ってて、脳汁ってエンドルフィン(*2)とかドーパミン(*3)だよねって思って…。で、学者仲間と話してて、じゃあ調べてみる?って話になって、調べて結果が出たから論文書いて……って。

*1 雑誌やネット上で使われる言葉で、ギャンブル特有のゾクゾクした瞬間に溢れ出る脳内麻薬のこと。10年ほど前にテレビ番組『アメトーーク!』の「パチンコ芸人」の回で、ブラックマヨネーズ吉田氏が脳汁について語るも、スタジオにいた芸人がひとりもその言葉自体を知らなかったことを考えると、パチンコメディアに触れていない人の認知度は低い言葉なのかもしれない

*2 脳内で働く神経伝達物質の一種。鎮痛効果や高揚感を得られるため、脳内麻薬と呼ばれている。興奮したりゾクゾクする際に分泌されるため、激アツリーチ中など興奮するタイミングでエンドルフィンが溢れ出ているのだろう。ちなみに、長時間走り続けたときに感じる「ランナーズハイ」はエンドルフィンが関与する現象のひとつ。以前パチンコ遊技中の姿を週刊誌に撮られた高橋尚子さんは、もしかするとエンドルフィン中毒なのかもしれない……

*3 中枢神経系に存在する神経伝達物質の一種で、やる気を生み出してくれる脳内物質。体を動かす、勉強するなど、実際に行動しているときに活性化する。報酬の期待を感じるときにも大量に分泌されるため、こちらもリーチ中や大当り中には、しとどに溢れ出ることが想像できる

ヤング あのね、東大の先生はそもそも必勝ガイド読まないと思うんだけど(笑)。

篠原 そんなことはねえだろ(笑)。だって田山さんだって東大じゃなかったっけ?

ヤング 田山さんも東大ですけど、こう言っちゃなんだけど、田山さんは何ていうか落ちこぼれなんですよ。だけど先生はちゃんと教授になってるじゃん。普通、大学教授は必勝ガイドは読まないよ(笑)。

篠原 いやよくわからないけど、送られてくるから必勝ガイドは毎回読むよ。

ヤング それは今は、でしょう(笑)。そうじゃなくて、その「脳汁」という言葉に出合った頃の話。

篠原 あぁ、そうか。あの頃は普通に連チャン打法(*4)あったじゃん。

*4 連チャン機時代は台によって連チャンが発生する契機が異なっており、特定の打ち方をすることで連チャン発生率を飛躍的に上げることができた。なかには必ず連チャンが発生したり、永久に連チャンする打法もあった。

一同 (笑)

篠原 ガイド読まなきゃわからないし、ボルテックス(*5)の法則とか読んで面白いなと思ったりね。それでズバリ当たってもちっとも得になっていないことに気がつくには時間がかかったとかさ。

*5  90年にSANKYOが発売した、ルーレット型デジパチ機種。オマケチャッカーを搭載しており、大量出玉を獲得できるだけでなく、保留玉で連チャンも期待できた。ルーレットとデジタルが揃い大当りした後、ドットに「大当り スタート」と表示されている間にスタートチャッカーに入賞すると50%で連チャンするという攻略法もあり、トップクラスの人気を誇った

大崎 先生は大学の教授になった後もパチンコずっとしてたんですか?

ヤング 先生がどんな台を打ってたか知りたいわ(笑)。

篠原 ボルテックス好きだったよ。レーザースペーシー(*6)は相当長いこと使われてて、あのパネルって色がついてるじゃん。あれが完全に消えて真っ暗闇の中でやってる状態の台を打ってた(笑)。なぜか当たって玉が出てるみたいな。「ブドウ・ブドウ・黒」で当たった!みたいなさ。あれ面白かったな。

大﨑一万発氏、ヒロシ・ヤング氏の著書『パチンコ崩壊論』(扶桑社)

*6 87年に平和工業(現在の平和)が発売したデジパチ機種。デジタル部分に透過光式透明板を採用し、ネオンのような美しい図柄が特徴。オマケチャッカーを搭載しており、見た目の美しさと出玉によって人気を集めた。ただ、長期間の稼働により透過光式透明板が映らなくなり、真っ暗なのに大当り……となることもあった

ヤング ボルテックスは……どこで打ってたんすか?

篠原 ニューアサヒ(*7)だね。

*7 長野県を拠点に現在24店舗を展開するパチンコチェーン。東京都では府中市に1店舗のみ

ヤング あ、長野だから。ガイドの中で「脳汁」って言葉が出てくるのって、おそらく1990年代の話ですよね。大当りの期待感を「脳汁」って名づけた人は天才だと思うけど、立派な科学者が「脳汁」という言葉を聞いて、あ、確かに出てるな、と思って研究したってなんかスゴい。よくわかんないけどイカレとるわ(笑)。