ヤング それって先生自らが被験者になってやってるってこと?
篠原 演出がどうなってるのかがわかってないと、ログで出てきたレコードの読み解きができないんだよ。例えば、ルパンGOLD(*16)の確変突入率の表はあるんだけど、実際こっちから見えていたときにゴールデンタイムに入るのが何パーセントか、みたいな話って、表だけ見てもわかんないんだよ。打った記憶があるから辛うじて分枝図が作れる。例えば前作の牙狼(*17)は確変突入率が30%で引き戻しを含めると50%だったんだけど、コケたじゃん。最初から50%突入の一種二種混合機はそんなにコケないのにね。それはなんでかっていうと、ドーパミン増幅で計算するとすぐに答えが出るの。そういうことをはっきりさせるためには振り分けとかが必要で、平均出玉じゃ計算できないんだよ。
*16 『CR ルパン三世~LAST GOLD』。電サポ大当りの70%が2400発と、爆発力のある一台だった。しかし、ヘソ大当り時の電サポ回転数に変動があったり、電サポ抜け後に内部確変があったりと、なかなかややこしい一面も
*17 『P 牙狼冴島鋼牙XX』。ST突入率は時短引き戻し込みで51・2%、継続率は約80%、出玉はオール1500発という、スペックだけを聞くと魅力的に見える。ただ、篠原先生のおっしゃる通り、突入率は他の台と大差ないのに、打ち手が辛く感じてしまったこと。そして何より、ST中演出のトロさ(大当りが確定してからもムービーが数分間流れ続けるなど)が、客飛びの要因になったと考えられる。当時、一部のパチンコライター界隈で「三重のオールナイトには向いてるよね~」という発言が飛び交っていた
大崎 純粋に研究でパチンコをしてる人がいるっていうのは、なんだか感慨深いものがありますなあ。
ヤング オレらのほかにも大っぴらに仕事だっていってパチンコ打ってる人がおるなと思って。
篠原 大っぴらかどうかは知らんけど(笑)。けっこう大変だぞ。
ヤング 今、思い出したんだけど、昔、海物語の秘密を解く、みたいなVHSのビデオを出した時に撮影で先生のところに行ったんですよ。そしたら先生が、魚群は右から出るのがポイントなんだって言ってて。動体視力は本能的に右からくるものに反応するようにできてて、さらには信頼度が40%っていうのが絶妙なんだと。
篠原 目は横についているから、横スクロールのほうが追いやすくなるようにできてるって話ね。右の視野から左の視野に動いていった段階で「ちゃんと出てる」って脳が感じられるから、心の中の時間が確保できるっていう意味。しかも左の視野から右の視野にいくよりも確保できる心的時間が長い。
大崎 じゃあ、信頼度40%が絶妙っていうのは?
篠原 それはドーパミンが関係してて、動物実験なんだけど、どのくらいの確率でエサを与えるとドーパミン量がどうなるかって研究結果が出てるの。これはさっき話した、演出によってドーパミン量が違うというのと通じていて、40~50%って確率は絶妙なんだよ。
ヤング そもそも依存ってドーパミンほしさに起こるものなんですか。
篠原 その単純モデルじゃ依存を説明するのは無理だって言ってんの。もともと何かをしたいって思うことには、すべてドーパミン神経系の活動と線条体(*18)の活動がある。これは明白。だけど普通はそうやっても飽きてくる。嫌になったりもするし、痛い目にあうと、もう嫌だってなる。だからドーパミン系だけで説明するのはもともと無理があるというのが一点。それがやめられないくらいになったりとか、家族に迷惑かけてもやる、というレベルになったとしたら、さっきから話している性格的な問題とか遺伝的な問題とか、併存症の問題だとか、もっと広範な何かを背景にもってないとなかなか厳しいね、というのが現状だと思ってる。
*18 運動処理や意思決定に関与する脳の主要部分。脳の中心部に位置し、動機付けや習慣的行動、適応的な意思決定に特化した役割を果たしている。私が本書の文字起こしを行ったのも、この注釈を書いているのも、きっと線条体が役割を果たしているからなのだろう
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