無償ボランティアになるためにカネを払う?
開催に至る過程で、怪しい「五輪便乗商法」も行われていた。しかもそれを、大学が中心になって開催しているとなると穏やかではない。
2018年6月、筑波大と神田外大が「国際スポーツボランティア人財育成プログラム」を開催した。リーフレットの「開催目的」には、「ラグビーワールドカップ2019や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会などの国際大会におけるボランティアとして活躍するために教養・知識を身につける。障害のある人へのサポート方法などを実技を通して学ぶ」とある。つまりラグビーWCや東京五輪でのボランティア活動を主目的にしているのだが、この講座のウリは、2日間の講座を受講すれば「修了証」をもらえることで、それが五輪ボランティアへの応募にプラスになることを匂わせている。
驚かされるのは、これが有料(2日間で5000円)であることだ。無償ボランティアへの応募のために、有料の講座で資格を取れ(もちろん必須ではないが)というのだから驚きを禁じ得ない。ボランティアはすべてが自己負担であるにもかかわらず、そのボランティアになるために資格が必要だとは、どこまで善意の学生からむしり取ろうというのだろう。
同じような講座を東海大も開催しているが、その勧誘メールには次のように書かれている。
東京2020オリンピック・パラリンピック大会では、約8万人の大会ボランティアが募集される予定です。このボランティアは、2018年9月中旬に参加応募され、書類審査や面接などを経て選考されます。選考の際には、スポーツボランティアの知識や経験、ボランティアに関する資格等を有していることがアドバンテージになるでしょう。
そこで本学では、「第1回スポーツボランティア研修会」を開催いたしますが、受講希望者多数のため、追加で「第2回スポーツボランティア研修会」を、下記の日程で開催することと致しました。多くの皆様のご参加をお待ちしております。
また、この研修会を修了し、スポーツボランティアとしての活動経験があれば、「スポーツボランティア・リーダー養成研修会」への受講資格が得られます。
こちらは筑波大よりも「スポーツボランティア資格が五輪ボランティア選考でアドバンテージになる」ことを明確に謳っている。こちらの受講料は1500円で、たった1日、2時間の講習で修了証がもらえる。
つまり、このスポーツボランティア講座の修了証とは、その程度の講習時間で得られるレベルのものであり、東京五輪のボランティアに決定後、組織委が無料で行う研修を受ければ誰でも取得できる程度のものと考えられる。それを有料で行う大学側の見識とはどういったものだろうか。学生もこのようなものに貴重なカネと時間を割かないよう、強く伝えたい。
そもそも組織委が一番欲しいのは大学生なのだから、このような講座を受けずとも、大学生であるというだけで採用となるはずだ。
ちなみに上智大学は「通訳・言語サービスボランティア養成講座」を開催しているが、こちらは無料。大学によってかなりの差があるものだ。