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快進撃・小山怜央アマの“竜王戦ドリーム” 将棋のプロとアマの実力差は、なぜ縮まったのか

快進撃・小山怜央アマの“竜王戦ドリーム” 将棋のプロとアマの実力差は、なぜ縮まったのか

竜王戦6組ランキング戦決勝進出をかけて、長谷部浩平四段と対局する

2021/04/27
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3、銀河戦で瀬川晶司アマの快進撃

 瀬川晶司・現六段は、アマチュア時代の2000年に参加した第9期銀河戦でプロを7人抜きした。そして、12期の銀河戦では当時順位戦A級に在籍していた久保利明八段に勝利。アマチュアが現役A級棋士に勝利したのは史上初である。銀河戦における一連の活躍が、のちのプロ編入試験実現へ大きな力となったことは間違いない。

 瀬川プロ誕生と同時にプロ編入試験が正式に制度化された。この試験を突破してプロ棋士になったのが今泉健司五段と折田翔吾四段の2名である。また、加来博洋さんと稲葉聡さんの2名がプロ編入試験の受験資格(公式戦における対プロ戦10勝5敗)を得たが、受験はしていない。

2019年9月のアマ名人戦、対折田翔吾戦 ©相崎修司

アマチュアの実力を向上させた2つの要素

 アマチュアの実力がプロに拮抗し始めたと言えるのはおそらく2000年前後だろう。2つの要素がアマの実力を向上させたと考えられる。

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インターネット対局の普及

 将棋倶楽部24をはじめとするインターネット将棋の対局環境が充実し始めたのがこの頃だ。アマチュア強豪だけではなく、プロ棋士もネット将棋を指していた。その結果として、全国各地の強敵と容易に戦うことができ、ネット将棋に取り組んだ人間がより強くなっていったのだ。

奨励会退会者のアマチュア復帰

 前述した瀬川、今泉、折田の3名は、いずれも奨励会三段リーグを年齢制限で退会し、一度はアマ棋界に身を置いた。加来さんと稲葉さんも奨励会に籍を置いていたことがある。他にも多くの三段リーグで鍛えた猛者がアマチュア棋界に積極的に参加して切磋琢磨した結果、アマ全体の実力向上につながった。

小山さんが初めて参加したプロ公式戦。2010年の朝日杯将棋オープン戦、対菅井竜也四段(当時)戦 ©相崎修司

 小山さんは奨励会にいた経験がない(三段リーグ編入試験を受けたことはある)が、アマチュア棋界ではアマ名人戦やアマ王将戦で優勝経験がある。現在のアマチュアとしてはトップクラスの実力者であることは間違いない。長谷部四段とは2年前の竜王戦でも対戦し、敗れている。その時のリベンジを実現し、竜王戦ドリーム街道を突き進むことができるだろうか。

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 この記事の筆者・相崎修司さんは文春将棋ムック『読む将棋2021』にも寄稿しています。

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