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――どの家庭でも「お姉ちゃんばっかりズルい」とか、「妹ばっかりズルい」とかありますけど、さらに血のつながった父親ではないという自覚まであるから複雑ですね。

渡辺 それが大きくなっても傷が残らないようにはしたいので。あまり血がつながってないことを意識させないようには気を使っていますけど。

50代にして、ママ友ができた

――子供を持つと人々との関係や地域との繋がり方が激変するというか、住んでいる町の風景は変わらないのに違う世界に入り込んだ気になりますよね。

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渡辺 地域社会に自分が溶け込んでいく感じがありましたね。それまで児童館がなんのためにあるのかも知らなかったけど、子供を抱えたら「あぁ、そういうためか」とえらく感心したり。

 近所を歩いてて、向こうから小学生とそのお母さんが歩いてくると緊張するわけですよ。「挨拶されるかな?」「こっちから挨拶したほうがいいかな?」「でも、誰だっけ?」とか考えてしまう。そんな場面なんて、以前の自分にはなかったですからね。

 

 ママ友なんか、死ぬまでできないと思ってましたよ。アユと父子家庭期間だった時に小学校の保護者会に行ったら、なぜかお母さんたち全員がうちの事情を知ってて。誰が喋ったんだろうって、その情報網には驚きましたね。

 とにかく保護者会に来るお父さん自体が珍しいし、育児するお父さんってお母さん方にすごく好感を持たれるらしいです。ママ友会に呼んでくれたり、いろいろと助けてくれてラッキーだったと思います。パパ友は現在にいたるまでほとんどいないですけどね。というより、育児や学校にパパが一切出てこないんですよね。 

独身でいるよりは確実に面白かった

――渡辺家という家族の形で良かったことって、なんでしょう?

渡辺 難しいですね。なにしろ、この家族しか経験ないので。結婚したし、連れ子も経験したし、自分の子供も作ったし、ひと通り全部こなしたのかな。でも、まだ、やってないことのほうが多いのかもしれない。まぁ、独身でいるよりは確実に面白かったかなと。あのまま独身で、なんとなく年を取るんだなというのが全部ひっくり返っちゃったんで。

【マンガ「父子家庭はじめました」第1話を読む】55歳漫画家に、突然小学生の娘が…「おれは全くわかっていなかった」初めての父子生活の顛末

写真=深野未季/文藝春秋