当たり前のことを連絡しているだけなのに、なぜこんなに怒られるのだろう……。新入社員だった私は途方にくれました。相手を怒らせると督促どころではなく、クレーム対応からしなければならず時間がかかります。そして相手を怒らせてしまってもこの仕事は入金してもらうまで何度も電話をかけ続けなければならないのでした。相手を怒らせないように、相手に嫌われないように催促をする、それが督促の難しさでした。
督促コールセンターの高いクレーム率から見えてくること
後から知ったことですが、督促のコールセンターは他のコールセンターよりお客様からのクレーム率が高いことで有名でした。
その原因は2つあって、一つはシンプルにお金がない状態なのでお客様も心の余裕を持つことができないこと。余裕がなくなれば誰だって怒りやすくなります。そしてもう一つはお客様には支払いをしていないという罪悪感、つまり「負い目」があることです。私はストレートに「入金をしてください」と相手に伝えていたので、それが「負い目」を刺激してしまい、お客様を怒らせていたのです。
メールの催促も同じです。程度の差こそあれ相手は仕事で忙しくて、心に余裕がないのかもしれません。そしてついうっかり返事をし忘れた、ファイルを添付し忘れた、そんな「負い目」を持っています。そこをストレートに突かれると誰だって痛いもの、相手のイライラはこの「負い目」から生まれているのです。
そこで私たちができることは、なるべく相手の「負い目」を刺激しないように催促をすることです。督促の目的は相手を責めることではありません、相手に入金してもらうことがゴールです。メールだって同じで、相手を責めるために「返事はまだですか?」という催促をするわけではなく、相手から返事が欲しいから連絡しているのです。
督促OLの工夫その1:「お願い」しない
私が督促を行う中で、相手を怒らせないためにしていた工夫の一つは「お願い」ではなく「質問」形式で連絡をするということです。
例えば、支払いを延滞しているお客様に、「支払いをしてください」と伝えるとストレートすぎて角が立ちます。そこで「何月何日に入金していただけますか?」と質問をする形式に変えて連絡をすることにしました。こうすると、この連絡は催促ではなく日付の確認になるのです。
人間の脳は質問をされると自動的に答えを考えるようにできているようです。質問形式で連絡をするとお客様は怒る間もなく「えーっと、給料日は10日だからその日なら払えるかな……」と支払える日時を考え始めます。私はこの方法で督促をするようになってから、驚くほど相手から怒られる回数が減りました。