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《貴族の男性2人にベッドで溺愛され…》ハーレクイン・王道ロマンスの裏で、過激な愛欲描く新レーベル「エロティカ・ラブロ」

《貴族の男性2人にベッドで溺愛され…》ハーレクイン・王道ロマンスの裏で、過激な愛欲描く新レーベル「エロティカ・ラブロ」

社外秘の「性描写をめぐるガイドライン」とは?

2021/05/07
note

——ハーレクインはジャンルで作品を選べて楽しいですね。

佐藤 《愛なき結婚》や《愛人契約》も定番ジャンルです。億万長者のヒーローの都合で、ヒロインは突如、妻や愛人になる「契約」をすることに。ヒロインは当然その理不尽さに悩み、「自分は贅沢な生活を手に入れた。でもここに彼の真実の愛はない……」という葛藤があります。

 ヒロインが秘書で、ヒーローがボスの《ボス秘書》も人気ですね。上下関係を乗り越えてどう対等な恋愛関係を育んでいくのか……。ヒロインの心の動きに感情移入してしまう読者の方が多いです。

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『ボスに別れを告げた理由』キャシー・ウィリアムズ

「キャシー・ウィリアムズの『ボスに別れを告げた理由』のヒロインはボスに退職願を出しますが、彼女を惜しむボスに懐柔された末、体の関係を持つことに。ヒロインはバージンを捧げ、さらにその一夜で妊娠! 《ボス秘書》×《シークレットベビー》の予測不可能な展開に、やきもきしながら一気読みしてしまいます」(佐藤さん)

「ブラジャー」と「パンティ」の間にある高い壁

——ヒロインとヒーローの関係が進むうえではラブシーンが欠かせないと思いますが、気を付けている点はありますか?

佐藤 ハーレクインには、ラブシーンも《あくまで美しい、情緒的なものに仕上がるよう、訳語選びを工夫する》という社外秘のガイドラインがあり、生々しく下品な表現や直接的な描写は避けています。

 具体的に申し上げると、局部の名称は一切NGです。下半身は特にデリケートな部分で、表現については特に気を付けています。

——情熱的なヒーローの場合、ラブシーンも激しい描写になってくるような気もしますが……。

佐藤 それでも女性読者が不快に感じそうな表現は避けるのが鉄則です。たとえば「触れる」「揉む」はOKでも、下品な印象になる言葉は避けています。せっかくロマンティックな気分が盛り上がってきたのに、そこで雑な言葉が入ると、一気に現実に引き戻されてしまうので。

※写真はイメージです ©️iStock.com

——私が読んだ中では「ブラジャー」という単語が出てきました。これはアリなのでしょうか?

佐藤 「ブラジャー」は言い換えができないので、そのまま使用しています。ヒーローが「ブラジャーを外す」を「下着を外す」にすると、ニュアンスが変わってきますよね。だから「ブラジャー」はOKです。でも、「パンティ」はNG。そこから先は、ハーレクインとして固く一線を引く部分です。

過激すぎる⁉ 新レーベル「エロティカ・ラブロ」

——ハーレクインは激しい性描写があるイメージもあったので少し意外です。

佐藤 ハーレクインはある種、美しい理想の世界を描いているんです。ただ、実は昨年秋に《エロティカ・ラブロ》という新しいレーベルを創刊しまして。ラブロは、タイトルからもわかる通り、ティーンズラブなど日本独特のエロティックな文化に親和性のある作りをしています。上品でロマンティックなハーレクインとはまったく別の世界観で、読者層も大きく異なります。そこでは、ヒーローがパンティを放り投げたりしています(笑)。