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来るたび変わる預かり金の金額

 その際、預かり金は日本円にして約1000万円と説明されたが、それ以降は来るたびに桑原さんが説明する金額は異なり、800万円や300万円ということもあったという。

 最初はその4人で、2回目に桑原さんが単独で、3回目は後輩と鈴木教授、留学生の3人だけがAさんに会いにやって来たという。3回目の際は、Aさんがなぜ桑原さんがいないのかと尋ねたところ、鈴木教授から彼女が逮捕されているとの説明も受けている(※後に判明するが、彼女は有印公文書偽造容疑で06年12月に逮捕され、07年3月に保釈。後に執行猶予付き判決を受けていた)。

 この、桑原さんが逮捕・勾留されている期間に、4回目の訪問として、後輩と鈴木教授、留学生、そして来日した魏の両親がAさんの実家にやって来たのだった。

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 魏の母親は、会うなり畳に頭をこすりつけて泣きながら謝罪したそうで、魏の父親も、「息子の減刑を頼みに来たわけではありません。うちの子は死刑でも構わない。親として謝りに来ました」と涙ながらに謝罪して、その場で改めて慰謝料の支払いを約束したのだそうだ。

©️iStock.com

度重なる怪しい言動

 やがて、魏が最高裁に上告して間もなく、保釈された桑原さんがAさんの実家にやって来た。Aさんは言う。

「うちの実家の玄関を開けて、すぐの板張りのところで桑原は土下座をして、『すいません。(魏を)上告させたのは自分です』と謝りました。そしてこの事件には“黒幕”がいるという話をして、『(魏に)本当の話をさせないといけない。真実の話をさせるまでは死刑にできないから』と言うのです。じつは彼女は最初に会ったときから、魏が遺体を博多港に遺棄した際に立ち会った“黒幕”の似顔絵を描いていると言い、第三者に(犯行を)依頼されたという魏からの手紙を持っていると話していて、『じゃあそれを持ってきてくれ』と言うと、『別のバッグに入れてる』という具合に、いつもはぐらかしていたんです」

 魏の両親が約束した慰謝料の支払いについても実行されなかったとAさんは憤る。

「それ以降も桑原は何度かうちに来たんですけど、最後には『私が貰ったおカネだ』と口にするようになっていて、いつの間にか電話にも出なくなった。鈴木教授にも電話をかけて、『あなたが責任取ってくれよ』と詰め寄ると、自分は関係ないということを言うようになり、そちらも電話に出なくなりました」

 以来、Aさんは桑原さんや彼女と一緒にいた人物とは連絡が取れずにいたのである。

 これは明らかに怪しい。そう感じた私は、桑原さん本人を追うことにした。

#3へ続く)