早く切り上げたいという気配が伝わってくる
遮られて頭に血がのぼる。
「じゃあ、どうして2年で情報を送るのをやめたんですか」
「お手紙を差し上げたんです、退会されますか? って。お返事をいただけなかったのでストップしたんです」
「それでも、丸2年も情報を無料で送ってくださってたなんて親切ですね」皮肉を言わずにはいられない。
「いいご縁があったらと思いましてね。お父様、お嬢さんのことも心配しておられましたよ」笑ってしまった。いくらなんでもそんな場所で、娘の話なんかするわけないじゃないか。
「わたしのことが話に出たのに、高いお金を払う前にご家族に相談されたらどうでしょう、って言ってくださらなかったんですか?」
「それは個人の自由ですよね。知られたくない方もいらっしゃるでしょうし」
このあたりで早く切り上げたいという気配が伝わってくる。
「とにかく、入会金以外のお金はこちらではいただいてないですし、退会された方の情報は消去するのでこのくらいしかお伝え出来ないんです」
「え、情報消去したのに、こんなに覚えていらっしゃったんですか、父のこと」
「お父様、お元気でとお伝えくださいね」
咳払いとともに電話は切られた。
少し前に、ツイッターでこんな内容の投稿を見た。
〈自分の身内が詐欺に合ってないか心配なとき「怪しい電話や訪問はなかった?」と尋ねるより「最近、親切にしてくださってる方いる?」と聞いた方がいいそうです。○○の営業の方がよく話し相手になってくれるとか枝を切ってくれた、というのは危険です。母に今度聞いてみよう。〉
自分の身内が詐欺に合ってないか心配なとき「怪しい電話や訪問はなかった?」と尋ねるより「最近、親切にしてくださってる方いる?」と聞いた方がいいそうです。○○の営業の方がよく話し相手になってくれるとか枝を切ってくれた、というのは危険です。母に今度聞いてみよう。
— ちこりの教室 (@chikoriroom) April 12, 2021
本当に、本当にその通りだ。身にしみて思う。身にしみすぎて、筆者はもう煮びたしのようになっている。
来週、また実家の片付けに行く。もしかしたらあの家にはまだ、父が人と繋がりたかった証拠が埋まっているかもしれない。
それを考えると、すこし寂しくて、すこしこわくて、ほんのすこしだけ、わくわくする。