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平成の政商「絶頂期」の還暦祝い

 船津屋で開かれた還暦祝いは、水谷建設が会社として催したというより、水谷功のプライベートな祝いという色合いが強い。来賓や祝いの花を見ても、水谷建設の取引先は意外に少ない。個人的な交友関係を中心に開かれた酒宴といったほうが適切だろう。中央政界から亀井事務所の井上や古賀誠の元秘書たちが駆けつけ、その宴を盛りあげている。ひとしきり来賓の挨拶が終わったあと、水谷建設元社長の川村尚がマイクを握った。小沢一郎の秘書たちに裏金を渡した張本人と報じられてきた人物である。川村が笑顔で挨拶する。

「3日前の朝、水谷会長から電話がありました。『おい、川村、俺、最近、朝立ちがないんやけど、これって異常かな』っていうふうな電話でございました。『わしもバイアグラのお世話にならなあかんな』という。60歳になっても、それくらい元気があるんです」

 還暦祝いで水谷は、川村のことを常務と呼んだ。川村は03年11月に常務から社長に就任しているから、このときすでに1年半近く社長の椅子に座っている。だが、そういう意識さえなかったのだろう。水谷建設における川村は、水谷功の傀儡に過ぎない。ずっと水谷功の太鼓持ちのような存在だった。還暦祝いでも、水谷建設の社長としてのスピーチというより、宴の主役である水谷を登場させるためだけにマイクを握ったかのような印象を受ける。

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 その川村による紹介の後、水谷自身が登場した。船津屋の女将から花束を受け取り、長男をそばに立たせて頭をかきながらスピーチする。

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「先ほどは常務(の川村)のボケたような挨拶でしたので、この会の趣旨をもう一度説明します。みなさま方にお集まりいただきましたけど、ここへは、私の身内が1人もおらんのです。ただ長男坊主だけが来とるんです。私にはいろいろありますもんですからね。長男坊主がここへ来るから、あとの身内は誰も呼べないわけです。そういうことで、会の趣旨を十分に説明しろ、と常務に言っとったんですが、やはり、どことなく足らん常務でですね、まあ、こんなところでご勘弁願います」