活動をしていないのに自治体から一定の公金を受け取る「幽霊消防団員」。
全国的に広がるこの問題は、消防団員や自治体職員の間では触れられない闇として長年放置されてきたが、近年になって告発が相次いでいる。そんな幽霊消防団員問題について、記者の立場で迫り続けるのが毎日新聞社の高橋祐貴氏だ。
ここでは同氏の著書『幽霊消防団員 日本のアンタッチャブル』(光文社新書)の一部を引用し、公金の流用、緊急時の団員不足にもつながりかねない幽霊消防団員問題の闇を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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公金が何に消えているのか ── 岡山市での実態調査
岡山市が2015~16年度、一度も活動していない348人の消防団員に計1460万円の報酬を支払っていたことが市への取材で分かり、18年5月に報じた。348人は、全消防分団が原則参加する年1回の訓練大会やその練習にも参加しておらず、幽霊消防団員の可能性があった。幽霊消防団員の常態化は、公金の流用、緊急時の団員不足などにつながりかねず、市消防局は報道後に実態調査を始めた。
長期間活動していない団員の存在が問題視され始めていた中、これだけ大人数の存在が判明するのは異例だった。市消防局によると、市消防団には17年度、4577人が全99分団に所属していた。市は、活動実績にかかわらず各団員に年2万1000円(一般団員)の報酬を支払っている。また、団員が出動すると各分団長が市に報告し、出動に応じて市が団員に手当を支給する。全分団が原則参加して消火技術を競う年1回の操法訓練大会などへの参加も支給対象だ。
毎日新聞は、事実上退団しているにもかかわらず報酬が支払われている団員の存在を把握し、17年2月、市に調査を求めた。その結果、15~16年度で全体の約8%にあたる348人は出動・訓練参加の報告がゼロだったことが判明した。
また、手当が支払われていない団員を単年度で見ると、15年度は622人、16年度は567人いることも発覚した。毎年、少なくとも実員の10%超の団員が確認できる履歴上、活動に参加していないことも分かった。
総務省消防庁の通達によると、報酬・手当は団員個人の口座に振り込むことになっているが、消防団の関係者によると、実際には分団側が口座を管理しているケースが少なくない。市消防局は、
「緊急時にどれだけの団員が配置できるのかは正確に把握する必要がある。実態を調査し、改善を検討したい」
とした。取材に取りかかった中で幽霊消防団員の男性に事前に接触した上、詳細を聞いていた点は大きかった。男性が所属する団では、報酬や手当を振り込まれる個人口座の通帳は分団が管理している。そのため、飲食・旅行に流用され、退団を願い出るも約5年間にわたって拒まれ続けた。通帳を再発行すると、無活動の期間で10万円以上の報酬・手当が入金されていた。