いまも公然と売春が行われる“ヤバい島”として、タブー視されてきた三重県の離島・渡鹿野島。「売春島」と呼ばれているこの島の実態に迫ったのが、ノンフィクションライター、高木瑞穂氏の著書『売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』(彩図社)。単行本、文庫版合わせて9万部を超えるベストセラーとなっているほか、同書を紹介した「文春オンライン」の記事にも大きな反響が寄せられた。

 そこで、「文春オンラインTV」(10月24日放送)では、現地を徹底取材した高木氏にインタビューを敢行。最盛期の「売春島」の状況から、いま島にいる女性たちの実態まで、本書に書ききれなかった秘話を語った。

渡鹿野島についての著書がベストセラーとなった高木氏が「文春オンラインTV」で語った(著者提供)

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スナックやパブを隠れ蓑に「置屋」が約13軒

――そもそも渡鹿野島は、どこにある島なのですか?

高木 渡鹿野島は、三重県志摩市の東部、的矢湾の中央部にある本当に小さな島で、周囲7キロぐらい。人口は現在およそ200人の小さな島です。名古屋からだと近鉄線で「鵜方」という駅で降りて、そこからタクシーかバスで20~30分行くと、「渡鹿野渡船場」という船着き場に着きます。そこからは「ポンポン船」と呼ばれる小型船に乗って、3分ぐらいで着きます。対岸から島が目視できる距離ですね。全盛期はスナックとかパブを隠れ蓑としたいわゆる「置屋」が13軒ぐらい、島のいたるところに点在していて、管理売春で栄えてきた島でした。

島への交通手段である小型船(著者提供)

――高木さんは、なぜ渡鹿野島を取材されようと思ったのでしょうか?

高木 最初は11年くらい前に、週刊誌の取材で「ちょっと行ってみるか」くらいのノリで潜入取材をしました。ところが、その数年後に「売春島」で女の子を斡旋して“人身売買”みたいなことをしていた元暴力団員のブローカーと知り合ったんです。その人物の告白を記事化した頃には「この島について、僕がライターの中でも詳しい方なんじゃないか」という思いが生まれて、決定版のような仕事をしたいと思ったのがきっかけですね。