――女性たちは、好きで来ているわけではありません。現地ではどういう管理をされていたんですか?
高木 借金がある子は、返済し終わるまで島から出られないので、船の船頭さんをはじめ島中の人たちが逃げないように監視をしていたんです。だから、例えば生活用品を買いたいとなっても、「トイレットペーパー2つ」「石鹸1つ」と紙に書いて渡して、置屋のチーママ的な人が代行で買いに行ってくれた。
ただ、借金を返し終わったら結構自由なんですよ。さっきも言ったように、バブル期までは1カ月とか2カ月で借金が返せた。でも稼げるので、島に居ついちゃう子も多かった。というのも、置屋のママさんや島の人たちが、女の子にすごく優しいんです。「女の子が売春で稼いでくれるから私たちも潤っている」という思いがある。例えば、島の居酒屋に女の子が1人で食事をしたり、飲んだりしていると、島民が全部おごってくれたりするような「家族ぐるみ」とでも言うような感じだったんです。
そうは言っても、女のコが長く働いてくれた方がいいわけで、ママの息のかかった行商のおっさんから高級着物やブランド物バッグを半ば強引に買わされたりなど、借金を返し終わらないようにするための様々なトラップもあったそうですが。
――それでも、中には脱走を試みる女性もいるわけですよね。
高木 僕が取材した中では、1人は海に飛び込んで泳いで逃げた。もう1人は未遂でした。対岸まで泳いで、壁にタッチしたところで、サーチライトのようなのがパーッと光って、島民に捕まえられて連れ戻されました。鵜方の渡船場から島までは500メートルぐらいあるのですが、「三ヶ所」という場所があって、そこからなら本土と島の間は200メートルほど。実際には、そこを泳いで渡ったという話を聞いています。それでも、波がある夜の海を泳ぐので命懸けだったと思います。
ホテルのママが原付に乗って追っかけてきた
――夜は宴会に女性が呼ばれるっていうスタイルなんですか?
高木 そうですね。娼婦であっても基本的には宴会に入って、宴会が顔見せ代わりになっている。飲んで騒いでコミュニケーションを取りながら、気に入った子を指名して、そのまま一晩過ごすというのがこの島のスタイルなんです。なので、宴会代とロングの4万円と、あと交通費合わせたら、大体10万ぐらいかかる高い遊びなんですけど。
――やはり島を訪れるのは、みな売春が目的だったんですか?
高木 そうですね。島民たちが「売春以外何があるの?」と言うぐらいで。ただ、実際に島を訪ねてみると特定のホテルには温泉があるし、風光明媚な場所もありますし、島で採れるわけではないのですが、近隣で採れた魚介類が安く食べることができます。