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「飲み食いさせてあげているではないか」

 年に1回ぐらいは地域の公民館で、町内会長や婦人会のメンバーも参加した飲み会も開催され、飲食店を利用することもまれにあったが、他組織との交流を兼ねた飲み会以外は機庫で開かれた。飲み会の会話は、多摩地区の消防団と同様に地域や職場での噂話ばかり。男性が所属している分団は、公務員の比率が高かったので、中心メンバーの職場の話が中心だ。聞いていても登場人物の顔も知らない人の話ばかりの上、同じ話が繰り返されるため、退屈で気が滅入った。

 入団後、飲み会が頻繁に開かれていたものの、訓練といえば数分で終わる程度。訓練なしで飲み会だけが開かれることも多かった。2~3年間、悶々としたまま過ごし、全国の実態がどうなっているのかインターネットで調べてみたり、職場の同僚や家族などに相談したりしてみたが、解決の糸口は何も見つからなかった。

 何度も心が折れかけたが、支えとなったのは、自分名義の通帳の中身すら見たことがない不都合さだった。疑問に思い、何度も口座を見せてほしいと依頼したが、

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「団でしっかり管理している。飲み食いさせてあげているではないか」

 と幹部から叱責されるのが落ちだった。飲み会への参加を拒もうと何度も思ったが、厳しかった。

市議会議員も出入りする消防団の飲み会

「退団を拒んだのも、プールできるお金が減るからではないか。飲食代に使っているのなら税金の無駄遣いだ」

 心の中で何度もつぶやき、消防団と関わることがストレスになった。私が分団長に直接取材した時の受け答えの内容を伝えると、温厚な男性が途端に語気を強めた。

 男性はこれまで、退団できないことや個人に手当・報酬が支給されていない実態、分団で銀行口座を一括管理している状況の改善を野党ならと思って市議会議員に相談したが、まともに取り合ってくれなかったという。機庫で開催される飲み会には与野党関係なく、市議会議員が出入りしているため、なんらかの癒着があるのでは、という疑惑が自然と湧いてきたという。

「行政も見て見ぬフリで、相談しようと思ってもするところがない。どうすればいいですかね」

 話を聞きながら、ただうなずくしかなかった。