昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「グルになって、私の家族を崩壊させようとしている」マンション管理員が体験した“ヤバい”住民トラブル事件簿

『マンション管理員オロオロ日記――当年72歳、夫婦で住み込み、24時間苦情承ります』より #1

2021/05/15

 須藤さんがヒートアップして言うには、石川さんの息子は、共同部分である躯体を叩いているので、壁のどこかに穴が開いている。共同部分である躯体を傷つけ、財産価値を損なう行為を継続している以上、管理組合としては無視できないはず。それらの騒音は何カ月間にもわたって録音してある。みんなで自室に来て実情をたしかめてほしい、というのであった。

 子どもが躯体を穴が開くまで叩くなど、そんなバカなことがあるものかと思ったものの、新任管理員としては「ご事情はわかりました。今度の理事会で報告しておきます」と答える以外ない。

 とりあえず、理事長に報告(*5)すると「また須藤さんですか。まだそんなことを言ってるんですね」と言う。以前にもそういう訴えがあったが、単なる生活音にすぎないという結論になり、取り合わなかったという。

*5 どんなことがあっても逐一、報告する。連絡の方法は会社勤めの理事長であればケータイで許可を得るし、在宅の理事長であれば電話連絡して了承を得る。そうしておかなければ、住民さんが直接、理事長にクレームなどを言いに行ったとき、「聞いてないよ」ということになり、管理員は職務怠慢の烙印を押される。

「放っておいてください。住民間のいざこざは、管理組合は関知しないほうがいいんです。管理員さんも深入りしないほうがいいですよ」

 とはいえ、最前線で須藤さんの相手をしているのは私なのである。

「もしまた須藤さんが言ってきたら、どうすればいいのでしょう」

「そのときは、文書にして提出してくれ、そうでないと理事会としては検討しないと言っていた、と伝えてください。前回のときもそう言ったら、なしのつぶてになりました。自分ちの家庭不和を誰かのせいにしたくてしようがないんでしょう」

 数日後、須藤さんがやってきた。理事長から吹き込まれた情報がそうさせるのか、初対面ではよい印象だった須藤さんの顔つきが猜疑心に取り憑かれているように見える。

©iStock.com

 理事長から言われたとおり、主張を文書にして提出してほしいと伝えたところ、須藤さんはしぶしぶ了承して帰っていった。

ある住民紛争の顛末② 書面で提出を求めたところ…

 そうして2週間ほどが経ったろうか。A4判の用紙にパソコンで打った、小さな文字の並ぶ十数枚の文書が届いた。そこには、何月何日何時何分、どこそこの方角から叩くような音が何十分何十秒間続いたなどといった文がびっしりと並び、紙面を埋め尽くしていた。

 それを見た理事会の決定は一方の話を聞くだけではよろしくないということであったので、石川さんからの言い分も文書にして提出してもらうことにした。

 のちほど届いた石川さんからの文書も、これまた自分の家族にどんな罵声を浴びせかけられたか、といった文面が連綿と続く文書であった。

z