「川村社長と引き会わされたあと、すぐに水谷会長から、『これ、川村の携帯番号だからね』とメモを手渡されました。会長たちが帰ると、女将さんも『実は水谷さんから、川村さんの相手にどうか、と話があるんだけど、そういうことをする気がある?』と言う。『あるんだったら、ビジネスとして割り切って、私を通してきちっとお付き合いをしてもらわなきゃいけない。水谷さんのほうに了解を得ました、と私が伝えるからね。川村さんとのいろいろなことは随時私に報告をしていってよ』って指示されました。申し出をOKしてから何日かして、川村さんから電話がかかってきました。いい人でした。それで、あまり深く考えもせず、お付き合いするようになったのです」
料亭にあわられた小沢の秘書
向島「花仙」に出入りしていた水谷建設の関係者によれば、次のような話だ。
「月の手当は40万円。『わしが花仙に届けたる』と会長が言っていたけど、会長みずから毎月、そのために店に行くわけにはいかない。愛人手当は、もっぱら料亭の勘定に上乗せされ、会社の経理から捻出していました」
彼女には純粋な恋愛感情があったのかもしれない。本人は川村との付き合いのなかで、手当など1円も受け取っていない、とこう話す。
「三重から東京に出張するたび、よくデートしました。といっても、川村さんも慣れていなかったのだと思います。ホテルに泊まった経験はありません。たいてい社員が泊まる水谷建設の東京寮に連れて行かれました。そこに宿泊したことは何度かあります」
すぐに2人は親密になり、「花仙」が水谷建設社長の御用達になった。そうして、間もなくそこに現れたのが、小沢事務所の大久保である。川村が来店してから半年後の03年の冬のことだ。
VIP待遇だった小沢事務所の金庫番
「そのころ、川村さんから麻布十番の『小やなぎ』というふぐ料理屋さんに誘われました。8人ぐらいの大勢で食事した覚えがあります。そのなかにいたのが、大久保さんだったのです。それが初めてでした。それ以来、川村社長は必ずといっていいほど、大久保さんを連れて『花仙』に来るようになったのです」
そう彼女が記憶をたどる。
「川村さんは、大久保さんのことを『大事な客だから』と言う。かなり気を使っていたと思います。それで、大久保さんがいらっしゃると聞いたとき、検番に頼んで芸者さんを呼んでもらいました。最初に頼んだときの相手が『女めちゃん』という半玉です。以来、大久保さんは、彼女をすっかり気に入りましてね。来ると必ず、女めちゃんを呼んで隣に座らせるようにしていました」
水谷建設にとって、小沢事務所の金庫番である大久保は、まさにVIPだ。下にも置かぬもてなしをしなければならない。