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森友公文書改ざん「亡くなる前の晩に電話があったんです」赤木俊夫さんの義母が語ったあの日のこと

『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』より#2

2021/05/25

source : 週刊文春出版部

genre : ニュース, 社会, 政治, 読書

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「トッちゃんが亡くなった」

 翌日、お母さんは友人と関西方面に旅行に出かけた。しかし俊夫さんの様子が気になって楽しめなかったという。

「(友人に)『おもしろないことあって、ごめんよ』と言ったんです。その時はもう(俊夫さんは)亡くなっていたんでしょうね」

 帰る間際になって「トッちゃんが亡くなった」と電話で知らせが入った。

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「かわいそうでしようがない。私は最初から『トッちゃんは殺されたんじゃ』思って。財務省が殺した。葬儀の時『助けてあげられなかった』と謝りました」

 そして我慢してきた思いがあふれ出した。

「財務省の中へ鉄砲持って入りたかった。片手じゃなく両手に持って。そんなこと思うくらい、憎くて仕方ない……」

 スマホの向こうの表情に、やるせない憤りがみなぎっていた。

 私は最後にもう一度、雅子さんの兄に尋ねた。

 ―そちらは保守的な土地柄ですよね。雅子さんは若い頃から自民党支持だったと話していますが、皆さんもそうですか?

©iStock.com

「ええ、そうです。ずっと地元の加藤さん(編集部注:現在の加藤勝信官房長官)に投票しています。これからも変わらないでしょう」

 奇しくも加藤氏も財務省の前身、大蔵官僚出身だ。岡山が地元の故・加藤6月元農水相の秘書を務めた後、女婿となり、地盤を継いだ。

 雅子さんの兄は長年の自民党支持者として、妹の思いに向き合おうとしない今の政権のありように不満を隠さなかった。

「今の政権の人たちは、戦後日本を作ってきた自民党の先輩方に対して申し訳ないことしとると思ってもらわにゃならんと思います」

 そんな、日本を動かしてきたトップエリートたちに訴えたいことがある。

「トッちゃんは国鉄からの転職組で、佐川さんのような生え抜きのエリートやないけど、志は本当に、日本国を代表して世界に誇っていい公務員だと思うんです。それを安倍さんの口から言ってもらいたいんです」

 この言葉。自民党を支持し続けてきた遺族のこの言葉を、安倍首相はどう受けとめるのか? それでも「再調査はしない」と言うのだろうか?