あの頃の夫に言ってあげたいこと
この本が発売される7月15日、赤木雅子さんの裁判が始まる。法廷での闘いが始まる。雅子さんが読者の皆さまに寄せたメッセージをご紹介して、この本を締めくくりたい。私は最後の一文に泣いた。
夫は『水戸黄門』が好きでした。最後の「助さん、格さん、もういいでしょう」という台詞を、寸分違わず黄門様と一緒に言う得意そうな顔が忘れられません。
今の政権がもしドラマになるとしたら、大河ドラマではなく水戸黄門。それも悪代官に安倍さん、越後屋役に麻生さんがしっくりきます。じゃ、誰が黄門様なの? 政治家の誰か? 裁判官? もしかして文春?
「いつか正直者が勝つ」という黄門様が好きでした。夫も改ざんに手をつけていなかったら、知っていることを公にして退職し、苦しいけど第2の人生を見つけられたかもしれません。それなら、せめて夫の残した手記を公表したい。亡くなった日、手記を見つけてから、ずっと思っていました。
私は物事を深く考えることが苦手で、計画性もなく直感だけで生きてきました。でも直感には自信があります。夫のことをいちばん理解してくれそうで、大きな組織、嫉妬深い男の社会に苦慮した大阪日日新聞の相澤さんに手記を託そうと決めました。直感はヒットしました。
手記は大きく報道され、訴訟をすることになり、真実を知りたいという再調査のお願いには35万人を超える方が署名してくださいました。手書きの署名をしたいとご連絡もいただきましたが、お気持ちにお応えできず申し訳ありませんでした。また、全国の方から温かい手紙をたくさんいただき不安でいっぱいだった私に勇気をくださいました。応援してくださった皆さま、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。こんな事になるなんて、あの頃の私たち夫婦には想像できませんでした。
ドラマの続き。現代の水戸黄門は実は安倍首相と麻生大臣で、密かに再調査を進めていたという話になれば、もっといいドラマになると思います。期待薄とは思いますが。
本を読んでくださった方の人生にも、色んなドラマがあると思います。今、どうにもならないと思っていても、時間が経てば良い方向になることがあります。
あの頃の夫にも、そう言ってあげたいです。