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「ナイフを買い与えた親を岡庭容疑者が見透かしていた可能性」茨城一家殺傷で問われる親の責任

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「問題は少年院ではなく出所後」少年はなぜ更生できなかったのか #2

2021/05/18

genre : ニュース, 社会

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医療少年院に入所した少年少女の7割は更生する

 医療少年院に入所した少年少女のうち約7割は更生すると言われています。成人の更生保護施設の場合、更生する割合は僅か3割と言われていますから、その2倍以上。とても高い更生率です。この結果は、成人に比べ、少年少女の方が若く柔軟で更生プログラムを受け入れやすいということもありますが、そもそも医療少年院という施設がしっかりと「教育」という観点に立って指導を行っているからこそ達成できた数字だともいえます。

 例えば、成人の場合は、刑務作業などをさせますが、しっかりと1人1人を見ることまではしません。しかし、少年については1人に対して、複数の専門家がつき、社会復帰のための指導に当たります。

2020年11月、岡庭容疑者の自宅を捜索する捜査員 ©文藝春秋

きちんと立つ、まともに歩く、当たり前の行動ができない少年少女

 医療少年院での更生プログラムはまず何より「本人の自覚」を持たせることを目的としています。入所後、最初は誰とも会話をしない完全に1人となる時間を数日間作り、自分と向き合わせます。自分のしたことや自分の立場、周囲との関係などを誰からも何も言われずに自分で考える時間です。

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 その後は社会人として当たり前に行われていることができるような指導をします。驚いてしまうかもしれませんが、入所してくる少年少女らの中にはきちんと立つ、人と合わせてまともに歩くということすらできない子達が大勢います。ちゃんと立っていなければいけない時に座り込んでしまったり、周囲と合わせてまっすぐ歩くことができずフラフラしてしまう子達もいます。

岡庭容疑者(2020年11月) ©文藝春秋

 そういった少年少女に対しても、根気強く教育を徹底し、次は毎日同じ時間に起きて、同じ時間に食事をし、決められた時間に作業や勉強を行う。そういった当たり前を日常化する指導を続けていきます。そして、ある程度基本的な生活習慣が身に着いたところで、段々と本人たちの心の中に踏み込んでいく指導を行っていくのです。