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さまざまな連結パターンが展開

 3年後の1997年に登場したE4系は8両編成と短くなり、その分定員も817人に減ったけれども、2編成を連結して16両とすれば定員は1634人となった。高速鉄道としては世界最大の定員だ。ちなみに、総2階建てジェット機エアバスA380型は、全席エコノミークラスとした場合の定員は853人である。E4系16両編成の輸送力の大きさがわかる。

E4系を2編成連結すれば定員は1634人となる ©️istock.com

 JR東日本は在来線のグリーン車も2階建て車両を連結するほか、通勤ライナー向けに全車2階建ての215系電車を製造した。JR四国も快速マリンライナー用のグリーン車「5100形」を連結している。唯一の定期寝台特急「サンライズ」用の285系電車や、かつて寝台特急カシオペアで運用され、現在は団体利用に限定されている寝台客車「E26系」も2階建てだ。

寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」で運用されている285系 ©️杉山淳一

 JR東海と小田急電鉄は、JR御殿場線と小田急電鉄の直通列車用として、それぞれ「371系」、「20000形(RSE)」を投入した。運用期間は1991年から2012年まで。引退後は両形式とも2階建て車両を抜き、富士急行に譲渡されている。

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 京阪電鉄も1995年の3000系特急車両の中間車に2階建て車両を1両追加している。これは新型の8000系にも継承された。近距離利用者は階段が億劫だから平屋車両を選び、始発駅から乗る長距離利用者は2階席を好む。棲み分けができているように思う。ちなみに2017年から8000系に有料座席「プレミアムカー」を連結した。プレミアムカーは平屋建て車両だけれども、2階建て車両によってもともと定員が多いからこそ、定員数の少ないプレミアムカーを連結できたと言えそうだ。

京阪8000系 ©️杉山淳一

2階建て車両が消える理由

 2階建て車両の変遷をたどると「2階の眺望サービス」を提供する観光型と、「着席定員を増やす」ための実用型に分けられる。この2つは大きなメリットだけれど、欠点もある。「乗降時間の長さ」「重心の高さ」「バリアフリー未対応」だ。

「乗降時間が長い」理由は、上下階の乗客が出入り口に合流するためだ。観光型列車では停車時間にゆとりを持たせて乗降時間を確保できる。しかし、通勤車両や特急列車は停車時間を短くしたい。こうなると過密ダイヤ区間では2階建て車両は使いづらい。

 JR東日本のグリーン車は完全着席で定員が少ないから連結できる。東海道・山陽・東北新幹線の2階建て車両も食堂車やグリーン車で、乗降口は混雑しにくい。しかし215系は通勤車両としては使いにくい車両だ。湘南ライナーが廃止されたいま、215系の活躍の場は少ない。団体、臨時列車くらいだろう。

湘南ライナーなどに使用された215系 ©️杉山淳一

「重心の高さ」は高速車両では欠点の筆頭だ。E1系、E4系の最高速度は240km/h。しかし、東北新幹線の最高速度は320km/hになっている。速度の違う列車同士を混在させると、高速な列車の足を引っ張る形になる。そこでE1系、E4系は東北新幹線から撤退し、上越新幹線に転属された。上越新幹線の最高速度は240km/hだけれども、これはE4系に合わせた設定だ。かつては時速275km/hで走行試験を実施したこともあり、全車がE7系に置き換われば全体的にスピードアップするはずだ。