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「ヤダこの人」夫の育児に不満を抱いていた吉川ひなの…夫婦が価値観を共有できるようになった“意外なきっかけ”とは

『わたしが幸せになるまで 豊かな人生の見つけ方』より #2

2021/05/30
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わたし でも女は家で寂しい思いをしてるわけじゃん。

 完全に甘えてるんだろうね。

わたし 一生現役で変わらずいたいなら、結婚したり子どもを作ったりせず自分だけでやってればいいんじゃないの?

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 男は妊娠も出産もしなくてなんにも変わらないから、想像しづらいんだよね。

変わったのは「人生の豊かさがなにかわかるようになったから」

わたし じゃああなたはどう変わっていったの?

 それはやっぱり人生の豊かさがなにかわかるようになったから。男からしたら妊娠中の10ヶ月間を共にして、胎動を感じることとかもないから。頭ではわかっていても実感がないままなんだけど、隣ではつわりで気持ち悪くてなんにも食べられないとか、かと思ったら突然普段食べもしないのにポテトチップ食べたいとか、ごはんがくせーとか、え、じゃあどうしたらいい? なんか買ってくればいい? とか男も、もうなんなんだよって、それにある意味振り回されて。で、実感ないまま父親になる。最初は、あ、ほんとに産まれた。赤ちゃんだ。へぇ~、俺の子なんだ、みたいな。

わたし イヤな奴だねほんとに。全部超他人事なんだね。

 男はそういう変化をひとつもできないからさぁ。それで振り回されながら、ああよかったやっと産まれた、これで一段落だねと思ったら、なんか赤ちゃんてなに言ってもわからないし、なんにもできないんだね。だけど生きてるから面倒みないとね。出かけるからこの小さい人になにか着せないとだよね、みたいな感じだったんだけど、それがだんだん寝返りをするようになったり、歩き始めたり、パパって呼ばれるようになって、少しずつ父親としての自覚が育っていって、そうすると自分にとっての親との関係と重なってきたりして、あのときの自分は親と自分以外なにもなかったなとか、不安で不安で仕方なかったなとか思い出してくうちに、あ、俺は今この子の親なんだなと思い始めて。

わたし 何年くらいかかったの?

 ぶっちゃけ3年くらい。

わたし だろうね。見ててわかった。それで二人目を妊娠したときにはどう変わってたの?

©iStock.com

 一人目のときで、つわりとかさ、泣きやまない赤ちゃんとか、あぁこれは終わるモノなんだ、いつまで続くんだろうと思ってた全ての出来事は実は一瞬で通り過ぎてしまうかけがえのない時間なんだって知って。急にするようになったかわいい仕草もなにもかももう次の日にはしなくなっちゃったりさ。娘が歩き始める瞬間を見て、うわぁ、歩いた! と感動したり。これを見逃したくないなと思うようになったんだよね。