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「東住吉冤罪事件」内縁夫の無罪を勝ち取った女性弁護士の怒り――青木惠子さん55歳の世にも数奇な物語【再公開】

「東住吉冤罪事件」内縁夫の無罪を勝ち取った女性弁護士の怒り――青木惠子さん55歳の世にも数奇な物語【再公開】

2021/05/24

source : 週刊文春WOMAN 2019夏号

genre : ニュース, 社会

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「東住吉冤罪事件」の背景にあるめぐみさん(当時11)への性的虐待。「女性の権利を守る発信基地」をうたう弁護士事務所の乗井弥生弁護士は、なぜ虐待を働いていたBさんの弁護を引き受けたのか。その理由を尋ねると、警察への怒りを語った。

 最新話の公開に合わせ、記事を再公開する(初出:2019年8月19日)。

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 捜査の最初のボタンの掛け違えは、火事の原因がわからないことだったのだろうと、乗井弁護士は推測する。そこに保険金の請求があった。母親の青木さんが受取人。でも青木さんは状況から火をつけられない。だから2人が共謀し、Bさんが火をつけたんだろう、となる。だが保険金と言っても以前から入っていた学資保険だった。火事でいろんなものを失くしてお金もない人が、保険金を請求しても何もおかしくはないと、乗井弁護士は指摘する。

「警察は2人の共謀による犯行というストーリーを無理矢理作ったとしか思えません。調書では、火を付けた後どうするか、弁解をどうするか、ろくに考えずに犯行を決めたとなっている。共謀と言うけど、中身がないんです。彼らを犯人と決めつけるための無理なストーリーですね。それが安っぽい小説みたいと感じたんです。そして証拠は自白しかない。この時点で無実かどうかまでわかりませんが、慎重に扱わなければならない事件だということはわかりました」

Bさんの印象は?

 ここまでで、乗井弁護士が主に青木さんについて話していることがおわかりになると思う。Bさんの主任だったのに。3年前、無罪判決からまもない時期に乗井弁護士に会い、私がBさんのことを念頭に「実際に会って人柄などから感じるものがありましたか?」と尋ねた際も、「青木さんに会えばわかりますが、そういうことをする人ではないですよ」と、Bさんではなく青木さんの人柄の話をした。

 ではBさんにはどんな印象を持ったのだろう。拘置所で初めて対面した際の印象を尋ねると、しばらく考えて、口を開いた。

16年8月、無罪判決後、支援者を前に頭を下げる。

「あまり積極的な印象はないですね。大人しい感じに見受けられました。私が用事があってすぐに拘置所に行けなくても、そのことを非難しない。Bさんから責められたことが1度もないんですよ。物事にまじめに取り組む人。えらいなあと思います。刑務所にいて光が見えない中でも、自分を律して闘ってきました」

全文は発売中の『週刊文春WOMAN 2019夏号』に掲載中

 Bさんがめぐみさんに性的虐待をしていたことは、記録を読めばわかる。その事実を知ってどう感じたのか?

「性的なことは、女性ですから、青木さんの心情に近いです。子どもに対する性的虐待は許せないし、簡単に許すべきではない。本人に『そういうこと(性的虐待)はあったんですか?』と聞いても否定はしないから、事実あったんでしょう。(放火殺人の)事件に直接関係ないから問い詰めたことはありませんが、責められても仕方がない。でも放火殺人とは別です。無実の人は無罪であるべきです」