「どうしてワクチンの予約ができないのか」と、疑問に思っている国民は多い。テレビでは、連日、電話がつながらないことや、予約のために長蛇の列に並ぶ高齢者が報道されていた。
日本では、国内治験を経て、2月から医療従事者の接種が、4月から高齢者の接種がそれぞれはじまったが、予防接種率は、先進国の中で最低レベル、途上国と同様のレベルといわれ、高齢者をはじめ、焦る国民は多かった。先日、1000万人が1回目の接種を終了したと報道された。
ワクチン接種が進まないボトルネックは何だったのか。ひとつは供給量が当初少なかったことがあり、もう一つは、国や自治体の仕組み、人員などの問題もあるだろう。
ここでは、ワクチン接種の現状を知るべく、大都市と小都市、ワクチン接種に奮闘する2人の自治体職員にそれぞれ話をきいた。また、現在の状況を前に、どのようにワクチン接種に向き合うのが賢い選択なのか、考えてみたい。
「場所もない、医師などの人手もない」からスタート
小さな地方都市で、ワクチン接種を担当するAさんにまずは話をきいた。Aさんは、もともと自治体のワクチン接種の担当者で、新型コロナウイルスワクチンも担当している。
「国から急に、7月末までに高齢者接種を完了すると指令がでまして、本当に大変な思いで、なんとかここまで仕組みをつくってきました。病院を一つ作るような感じでしたね」
と、Aさんは話す。Aさんによると、ここ3ヶ月くらいは休みを取っていないという。
「最初は、場所もない、医師などの人手もないという状態でした。備品の購入も必要です。2月に、4月に配るための接種券を作る作業をしましたが、転入・転出や、死亡の人を抜いたり、そういった作業がまずは大変でした。会場は、長らく使っていない建物を使用したり、体育館を借りたりしましたが、清掃を入れたりして準備を行った。一番大変だったのは、4月末くらいの時期でした」
ノウハウがなく、手探りで、医師会などを頼って人も募集をした。
この都市は、主に集団接種でワクチン接種を行っている。開業医での接種が盛んな自治体もあるが、Aさんの自治体では、開業医は躊躇することが多かったという。
「急なキャンセルが出てワクチンを廃棄せざるをえなかったり、何らかの間違いがあると、開業医さんが責められてしまいます。ですので、乗り気ではないという開業医さんが多かったのです」