コロナ禍のもとでの生活様式の変化は、私たちの消費性向にも大きな影響をもたらした。そのなかで、意外にも需要を伸ばした業界のひとつに「カーコーティング」が挙げられる。
コーティング業界の大手「KeePer技研株式会社」が今年5月に発表した月次情報を見ると、昨年5月以降の月次売上高は概ね前年比120%~150%の水準で推移している。 同社の株価を見ても、1月末の比較で前年の3倍に伸びており、変化の恩恵に与っていると言えそうだ。
テレワークの推進をはじめ、「巣ごもり」の傾向が強まるなか、家や車といった資産に関心が向くようになったのかもしれない。在宅勤務の最中、目にする機会の多くなった愛車がひときわ輝いていれば、やはり気分はいいだろう。
また、今の時期は雨が続く毎日のなか、車の美観に及ぼすダメージを気にしている方も多いかもしれない。
コーティングの効果は価格に見合うものか?
しかし一般に、コーティングの施工価格はそう気軽に手を出せるようなものではない。普通車サイズの価格を見てみると、先のKeePerは2万円程度からガラスコーティングのメニューを用意しているが、コーティング店によっては10万円を超えるものも少なくない。
コーティング製品に謳われているように、3年~5年にわたって輝きが維持されるのであれば、高い金を払う価値も見いだせるかもしれない。けれども多くの消費者にとって、「コーティングの膜が残っているか」など見極めようがないのであり、実際の「コスパ」はある種のブラックボックスに包まれているとも言える。
実際のところ、高価格なコーティングにはそれだけの価値があるのだろうか。
コーティング業界の実情について、専門店のオーナーやコーティングを扱う量販店のスタッフなどに話を聞いた。
コーティングの保証期間は「理想の環境」が前提
コーティングのプロに話を聞くなかで、共通の見解として見えてきたのは、「コーティングをすれば当然ツヤや水弾きはよくなるが、数年間効果を保つにはオーナー側でもそれなりに手間をかける必要がある」ということだ。
「コーティング保証期間として3年とか5年、みたいに表示されていますが、あくまでそれは条件が揃ったときの話です。正しい方法で施工して、理想的な環境で保管し、定期的なメンテナンスをする。車のカタログ燃費とか、そういうのと似てますね。ウチではお車の保管環境とか洗車の頻度なんかをまず聞いて、『屋外駐車だとこの年数は正直厳しいです』みたいに説明しています。その辺の説明が不足してると、あとからトラブルになりやすいですから」
「適切な施工」「良好な保管環境」「定期的なメンテナンス」といった条件は、その他のスタッフからも共通して聞かれたポイントだった。