今年3月、茨城県龍ケ崎市で起きた官製談合事件。警視庁と茨城県警は、同市副市長の川村光男と市社会福祉協議会理事の川北恵一郎の両容疑者を官製談合防止法違反容疑で逮捕し、現役副市長を含む4人が摘発された。中山一生龍ケ崎市長は記者会見を開き「あってはならない事案が発生したことを深くお詫びする」と陳謝した。

 そして4月には、その舞台となった市役所に勤務する3人の職員が半月のうちにそれぞれ命を絶つという、連続自殺事件が発生した。4月14日に契約検査課長補佐だったIさんが自宅で首を吊り、23日には生活支援課長補佐のMさんが自宅で自殺。さらに30日には人事課長のSさんが自宅で首つり自殺を遂げている。

龍ケ崎市役所を家宅捜索する捜査員たち ©️時事通信社

 5月6日には、中山市長名義による「職員の訃報について」という文書が職員向けに配布され、「けっしてひとりで悩まずに、話せる人に相談してください。周囲の人が異変に気づいたら、相談するように助言してください」とまで職員に呼びかけている。しかし、短期間に同市役所で3人もの連続自殺が起きるという異常事態にもかかわらず、自殺の原因について調査などが行われる様子は一向にない。

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市長から市役所員に配られた文書

市役所全体が言いなりになった人物、川北

 一見、無関係にも見えた2つの事象――だが、取材を進めると官製談合事件で入札情報の漏洩を主導していた人物が、亡くなった3人の職員のうち2人と関連があることが判明したのだ。

 その人物こそ、市の社会福祉協議会理事を務めていた川北である。

川北が代表を務める「株式会社ベルプラン」外観

 川北が、副市長だった川村との結託のうえ、自身と繋がりのある職員を契約検査課長のポストに配置し入札情報の漏洩に加担させていたことや、略式起訴された元市長公室参事の市役所内での処分の軽減をのちに命を絶つことになる当時の人事課長に要求していた疑惑などは、前回記したとおりだ。

 在宅起訴された市役所職員も公判で「誰もが悪いことと知っているのに(中略)逆らえる人はいなかった」と、市役所全体が川北の言いなりと化していたことを明かしている。

 しかし、いち民間人に過ぎない川北が、なぜこれほどまでに市政に介入することができたかという点については疑問が残る。