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 しかし、二人は生計を立てる準備をすでに始めている。自宅1階を農業民宿に改装し、古本屋も始めた。そのほか、お祭りのときに屋台を出したり、自ら修得した床張りのワークショップを開いたり、昨年は「X」部分で約100万円を売り上げた。翔さんは話す。

「いろんな仕事をしながら、耕作面積を増やして所得を上げ、家計を安定させていきたい。地方なら手取りで300万円あれば夫婦の生計は成り立ち、400万円も稼げば、贅沢な暮らしができますから」

 コロナの影響を受け2020年は休業状態だった農業民宿の再開のメドがたてば、X部分の収入の増加が見込める。年によって相場が変動する卸売り市場への出荷以外にも、自身が手掛けるホームぺージでの販売の割合が増え、固定ファンもついてきた。農家だけで十分に生計が立つようにすることが、当面の目標だという。

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農地付き空き家が人気も売買には制限

 筆者も半農半Xを目指す一人だ。担い手不足が深刻化する状況で、農地を借りることさえ大きな制限があることなど、想像もしなかった。農業を復興させる気などないのではないかというのが正直な感想だ。

 儲からない上に重労働、それも、初期費用が何百万円単位でかかるとなれば、新たに就農を目指そうと思う若者も少なくなるだろう。そもそも、生計のメドがたつビジネスであるならば、息子・娘世代に継承されているはずだ。農家自体が後を継がすことを躊躇し、現状の農家の高齢化と耕作放棄地の拡大が進んでいる。

©iStock.com

 ただ、筆者のように兼業農家を目指すわけではないが、家庭菜園レベルで農業を始めたいという移住希望者は多いだろう。その場合も、自宅の庭にプランターなどを置いて栽培する場合はいいが、農地法第三条(*1)が立ちはだかり、農地利用には制限が多い。

*1 「農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない」という法律

 群馬県南西部の安中市はコロナ下に農地取得の基準を大幅に緩和した。空き家バンクに掲載する「農地付き空き家」が人気だが、以前の基準だと売買が進まない状況だった。

 2009年の農地法改正で農業委員会の判断による下限面積の引き下げは可能となっているが、それまでは原則50アール(5000㎡)以上でなければ農地の売買はできなかった。家庭菜園レベルの広さではない。

 安中市の担当者はこう話す。

「安中市の場合は下限面積を30アールと設定していますが、それでも、家庭菜園レベルで農業を楽しみたいという人には広過ぎます。そこで1アールからでも売買できるようにしたことで、農地付き空き家バンクの売買が進むようになりました」群馬県内では安中市に続き、富岡市や桐生市も同様の取り組みを実施している。家庭菜園レベルの小さな農業であっても、使われない農地が少しでも再生すれば、日本の農業界にとっては喜ばしいことだろう。

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