目に見えない田舎の収入とは
東京から淡路島に移住したことで、住居費だけを見れば4万6000円安くなったと書いたが、車両費に光熱費、税金が高くなったことを考えると、固定的にかかる生活コスト自体は下がらないというのが正直な感想だ。
それでも、地方ならではの目に見えない収入がある。東京に住んでいた時代は隣近所の住人の名前さえ知らなかったが、今は隣の家で飼っている犬の名前もわかる。顔を合わせれば挨拶をし、困りごとがあれば助け合う。そんな社会が当たり前に残っている。まだまだ農業や漁業に従事している人が多く、野菜をもらったり、魚をもらったり、そうした見えない収入がある。
お米は「縁故米」を買う。縁故米とは、農家さんから直接譲ってもらうお米のことだ。筆者は地元で知り合った米農家さんから、30㎏7000円で買っている。スーパーだと5㎏2000円程度だから、相当格安だろう。
そうした目に見えない収入がある上に、都会と違って飲み歩くことがなくなった。そもそも、飲食店がほとんどない。車社会だから、飲んで帰るわけにもいかない。東京にいる時代は仕事柄、最低週に3回は誰かしらと飲みに行っていたと思う。それが今では、ほぼ自炊で、たまに近所のスナックや友人宅で飲む程度だ。
娯楽にもお金がかからない。都会は誰かが準備したものを消費するしかない。その点、田舎は魚釣りに行ったり、畑を耕したり、何かを仕掛けたり、何かを作り出したりすること自体が娯楽なのだ。そこにたいしたお金はかからない。生き方の問題なのだ。
更地に新築の家を建てれば、快適な生活はできるだろうが、お金はかかる。だが、空き家を自分で見つけ出したり、改修したりすること自体が楽しいし、それが田舎暮らしの醍醐味でもある。
固定的にかかる費用は車両費や割高な光熱費で都市部とさほど変わらないが、全体的な生活費で言えば、やはり東京と比べ安くはなるだろう。しかし、生活費を下げることだけを目的に移住すると、痛い目に遭うことだけはお伝えしておきたい。
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