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服藤 ちょうどオウム事件の頃からインターネットが発達したのも犯罪に大きな影響を与えていると思います。海外のネット上では、どうすればサリンを効率的に生成できるかなどの情報がオープンになっていたんですが、当時の日本人の多くはそんなこと全然知らなかった。

堂場 ネットと犯罪って、なぜかすごく相性がいいんですよね。80年代にも、盗品を売りさばくのにパソコン通信を使っていた事例がありました。誰でも利用できるということで、犯罪の垣根を下げてしまっている。

服藤 難しいのは、警察組織は発生事後にしかそれらに対応できない。つまりいままでの経験になかったことが起こったときに、準備ができていないと適切な捜査を行えないわけです。

堂場 具体的にどういった準備をするんですか?

堂場瞬一さん ©石川啓次/文藝春秋

服藤 オウム事件では化学兵器や銃火器が製造されました。これからは化学だけではなく電気電子や機械工学の専門家が必要となるだろうということで、民間からも人を集めて色んな分野の科学捜査官を作ったんです。私も参画したんですが、というのも、警察という組織では被害届が出されてから起訴するまでにどういう手続きや書類が必要かというのを知らなければ有効な捜査が行えない。科学に詳しいだけでは捜査はできないので、私みたいに元々捜査員ではなかったけれど組織にいた人間が先頭に立ちながら結果を出し、ノウハウを蓄積することが必要だったんです。

堂場 結局それって、人材育成の話ですよね。私も記者時代に取材していたから分かるんですけど、警察の世界って、技官以外は基本的に文系の人間の集まりじゃないですか。

服藤 そうかもしれません。だから、かつては数少ない理系の警察官をピックアップしたり、文系出身でも理系分野に興味を持っている人間を見つけて教育していました。警察という組織は警視庁だけでも4万人以上の職員・捜査員がいて、教育制度が非常に整っている。大事なのは、常に新しい知識を得ながら現場に出て経験を積むことだと思います。

堂場 ただでさえ警察官は忙しいのに勉強もしなくちゃいけないなんて、本当に大変な仕事だと思います。服藤さんの本を読んで最初に思ったのは「あなたたち、仕事しすぎだよ」ってことでした。