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聞く耳を持たない裁判所

 起訴の直後に保釈請求をしましたが、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」として簡単に却下されました。その後も、公判前整理手続の節目ごとに、保釈請求を繰り返しました。しかし、そのたびに検察官は、「およそ認められそうもない正当防衛の主張をしている」「釈放されれば目撃証人に面会を強要するなどして自己に有利な供述をするように働きかける」「目撃証人を作り上げる」などと言って保釈に反対しました。われわれは、山田さんには検察側の目撃証人に働きかけるメリットは何もない(そんなことをすれば「目撃証人」は捜査官にすぐに連絡して、山田さんの保釈は取消される)、山田さんの方から目撃証人を請求する予定などないと言って反論しましたが、裁判所は全く聞く耳を持ちませんでした。

「警察の操作ミスでデータを消去してしまって、今はない」

 公判前整理手続は難航しました。検察官が証拠の開示を徹底的に遅らせたからです。われわれは、現場のすぐ側に警視庁が管理する防犯カメラがあることを突き止め、その録画画像の証拠開示を求めました。ところが、検察官は「調査する」と言ったきり、1ヶ月経っても、2ヶ月経っても回答しませんでした。4ヶ月後になって「警察の操作ミスでデータを消去してしまって、今はない」という信じがたい回答をよこしました。この問題をめぐって、われわれ弁護側と検察との間で論争が繰り返されましたが、結局、問題のデータをいつ・誰が消去したのかは明らかになりませんでした。また、検察官はたまたま現場を通りかかった男性二人の証人尋問を請求しましたが、もう一人の目撃者(女性)と交渉中であるとして、何度も期日は空転しました。結局、半年近く交渉したあげく、3人目の目撃者の証人尋問はしないということになりました。

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 公判前整理手続が終結したのは、起訴から10ヶ月ちかく経過した2011年9月5日です。その直前に行った5回目の保釈請求がようやく認められて、山田さんは300日ぶりに社会に戻ることができました。それは、第1回公判期日の40日前でした。1週間にわたって行われた裁判員裁判の結果、山田さんは正当防衛が認められて無罪判決を獲得しました。「認められそうもない主張をしている」と言って保釈に反対していた検事からの控訴申立てもなく、無罪判決は確定します。しかし、拘禁されていた300日間に山田さんが失ったものは計り知れません。芸能プロダクションは所属タレントが居なくなり、解散しました。雑誌の連載企画もなくなりました。そして、健康も損なわれました。

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