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実態とあまりに乖離した判断

 こうした厳しい監視をかいくぐって、面会や手紙を通じて検察側証人に偽証を働きかけたり、逃亡計画の相談をしたりすることは、果たしてできるものでしょうか。私の知る限り、未決拘禁されている被告人が面会や手紙で証拠隠滅や逃亡の相談をしたケースなど1件もありません。証拠隠滅が問題となったケースは、職員の立会いのない「秘密接見」が保障されている弁護人(*2)や大使館職員などによる場合です。被告人が、職員が立ち会い記録を取っている面会室で、直接面会相手に証拠隠滅を指示したケースなど、見たことも聞いたこともありません。少なくとも、未決拘禁されている人の4割がそうした大胆な行動をとるなどと考えるのは、実態とかけ離れています。

*2 弁護士のなかには、「弁護人になろうとする者」として勾留されている被告人と立会のない接見をして、メッセンジャーとして外部の人間(ときには勾留されている別の被告人)とのコミュニケーションを媒介することを生業とするような人がいます。こういう弁護士は「鳩」とか「鳩弁」と呼ばれて蔑まれています。懲戒請求されたり刑事訴追されたりして資格を失う例もありますが、なかなかなくなりません。接見禁止決定はむしろこうした鳩弁に活躍の場を与えることにすらなっているのです。

弁護士だけが見ることができない審査資料

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 それではなぜ、これほど頻繁に接見禁止決定がなされるのでしょうか。それは第一に、接見禁止の審査が極めて検察官寄りの一方的なやり方で行われているからです。接見禁止の請求は勾留の請求と同時に行われるのが普通です。勾留についても、接見禁止についても、請求されたことは被疑者には知らされませんし、請求書が被疑者のもとに送られることもありません。弁護人に意見を求めるということもありません。そして、審査は検察官が裁判官のもとに送りつける「一件記録」によって行われます。一件記録とは、警察官や検察官が作成した捜査書類のことです。その中には被害者とされる人や共犯者とされる人の供述調書、警察官が現場の様子を記録した実況見分調書、科捜研の鑑定書などが入っています。ときには、被疑者が関係者と口裏合わせをしていたという捜査官の報告書や、その関係者なる人物の供述調書が入っていることもあります。