右を向いても左を向いても「豪奢」の一言
高さ6mの窓ガラスから田辺湾が一望できるラウンジで、ウェルカムドリンクをいただく。シャンデリアはベネチアンガラス、足元にはここにもモザイクタイルが敷き詰められている。
壁面はフランスの職人が施工した、フランス産ライムストーンの壁。
その壁にはシリアで発見された、2世紀頃のビザンチンモザイク画がはめ込まれている。
エレベーターの扉が開くと、ブラジル産ブルーバフィア石を使用した壁面。足元はフランスの木工工房よりジル・ゴベール氏の手掛けた美しい寄木細工。
2階の回廊には、陶芸家、加藤元男氏制作の陶板の壁。その壁には、横山大観や平山郁夫、シャガールやダリなど、誰でも一度は聞いたことがある有名画家の絵が並ぶ。ここにきてようやく馴染みのある画家の名前に、つい知ったかぶりしたくなる。
異様な雰囲気の宴会場
もっとも驚き、魅了されたのは、宴会場として使われた部屋だ。
室内に足を踏み入れるとドーム型の天井には、黒地に赤と白でダイナミックななにかが描かれている。これはイタリアの画伯、ジョルジオ・チェリベルティによって「愛と自由と平和」をテーマに描かれたものだそうだ。なにが描かれているのかはわからないが、パッションが視界いっぱいに迫ってくる。私を覆うように描かれている天井画は、あたかも自分自身が作品の中に入ったかのような感覚になる。
足元はここでも寄木細工だ。
パンッと手を叩いてみると、マイクなしでも音が響く作りになっている。
部屋に唯一光を入れる天窓には、針のない時計が描かれており、愛は永遠、愛は時間を超越するという意味が込められていることから、ここで結婚式を挙げる人もいるそうだ。
教会のような荘厳さと、ほんのり不気味な天井画。外界が見えない密閉空間。誰もいない孤独と静けさ。なにかよくわからない恐怖。わたしは夢を見ているのかもしれない。この部屋では、今まで感じたことのない不思議な雰囲気を味わった。その感覚がやみつきになり、そのあと何度もその部屋を訪れることになる。
エレベーターで3階へ。
エレベーターホールも床は寄木細工でできている。豪華なシャンデリアはベネチアンガラス。さらにそれを支える天井にも金箔が施されている。
廊下には中国の高級手織り絨毯、中国段通が敷かれている。一歩一歩絨毯を踏みしめながら、部屋へと向かう。