一番目につくオレンジ色の瓦は「瑠璃瓦」というもので、中国北京の紫禁城と同じもの。かつて皇帝以外使うことが許されなかった老中黄という色を、47万枚使用している。
入り口の庇は高知城にも使われた土佐漆喰仕上げ。塗り継ぎができないように50人の左官職人が24時間3交代で一気に仕上げたという。
ホテルのマスコットのように一際目立つウサギのブロンズ像は、彫刻家バリー・フラナガン氏が川久のために制作した、世界最大の特注品。
外壁のレンガはイギリスのIBSTOCK社にデザインを依頼し、使用されたレンガは73種類140万ピース、3500トン。施工には最盛期で約80人もの職人が作業した。
一番の見どころはやはりロビーである。
黄金に輝く天井は、フランスの人間国宝、ロベール・ゴアール氏が5センチ角のドイツ製金箔を1枚ずつ手作業で貼り付けたというもの。その枚数、約19万枚にものぼる。想像しただけで気の遠くなる作業だ。
金箔天井は、金箔押しされた最大表面積として、ギネス世界記録にも認定された。
金箔の純度は22.5金。これは陽に当たるときもっとも美しくロビーを照らすように計算されているという。
足元に広がるのはローマンモザイクタイル。1センチ角のモザイクを、イタリアのモザイク職人集団が1枚ずつ手作業で床にはめ込んだもの。
ロビーに置かれたピアノは最高級で有名な、スタインウェイ&サンズ社のハンブルク製特注品。
ピアノの奥に並べられている、奇抜なデザインの衣装は、ホテル川久創業当時の従業員の制服だ。ひと目で記憶に残る印象的なデザインは、川久を訪れることは、夢の世界に入るということを演出していたのではないだろうか。
ロビーに並ぶ、青く美しい巨大な柱は、左官職人がホテル川久建設のためにドイツへ渡って習得してきた、人の手で大理石の模様を作る技術「シュトックマルモ技法」で仕上げたもの。柱1本1億円だという。